自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

ラリー・イン・豊の国 2007 レポート

竜巻玉子さんから「ラリー・イン・豊の国 2007 レポート」が届きました。以下に全文掲載いたします。雨の中ご苦労様でした。

●ラリー・イン・豊の国 2007 レポート

レポート:竜巻玉子

梅雨入り当初、全然雨が降らず取水制限が行われ、田植えに影響を与えることもあったが、一気に雨が降り出してきた。ここ大分でも前日よりの降水が350ミリを超え、何時災害が起こってもおかしくない状態になっていた。当日も大雨洪水警報の出る中、主催のMSC−SECTでは、前日より寝ずの番でコースの確認を行い、ラリーの開催を決定した。集合場所の吉四六ランドには、27台のマシンが勢ぞろいした。今回は、ダートイベントということで、ダートにこだわりを持った人々が九州外からもエントリーしてきた。まずは、Cクラス。九州のレギュラー組に加え、北陸から手塚/斎藤組、中国からは小松/みとむ組、また関西在住で、ラリーの度に帰省する山田/村瀬組がエントリしてきた。

Bクラスは、なんと12台のエントリ。シリーズリーダの後藤/古原組を筆頭に、最近成長著しい寺川/北川組。実はドライバーポイントでは後藤の方が上回っているが、ナビのポイントは寺川のナビ北川の方が上であり、ここはなんとしてでも古原の後押しをしたいところ。また同日開催のラリー北海道をパスした三苫選手、また先日のひむかで早々にリタイヤしてしまった廣川選手などエントリしており、シリーズ上位につけている後藤選手、寺川選手としてはウカウカしていられない状態である。

Aクラスは、シリーズトップの黒原/三戸組はしっかりエントリしており、今年より復活した黒木/小野組、また、昨年R10のラリーで珍しいキャロルでエントリした井堰/井斧組もエントリしている。NAの黒原/三戸組としてはターボエンジンを積む黒木/小野組、井堰/井斧組がコースによって脅威に見えたに違いない。

さて、競技のほうであるが、今回は3ステに分かれており、1ステは低速度でレキを兼ねたラリー区間で、2ステ、3ステはSSとなり、実質的に速さ主体のラリーである。1ステで路面を確認すると、路面の荒れたところがうまくよけた形でSSが設定されており、長年この地でラリーを開催してきたSECTのノウハウが生かされていると感じた。

2ステに入り、実質的にラリーがスタートした。まずは、A山の比較的フラットなA林道を使った3.7K。いつもは、往復で使う林道であるが、今回は片方向のみとなっている。Bクラスは、ここでいきなり波乱。先日のひむかラリーで早々にドライブシャフトを折ってリタイヤした広川/森下組がここでもドライブシャフトを折ってしまいリタイヤ。さらに現在ポイント2位につけている寺川/北川組も同じく、ドライブシャフトを折ってしまった。荒れた路面は予想以上に車を痛めつけているようだ。そんな中、トップをマークしたのはバリバリの地元の2選手、後藤/古原組と昨年のこのラリーの覇者山岡/森組である。4秒遅れて全日本ドライバーの三苫選手。今回はいつもの永山ナビではなく新人の辻ナビを乗せて来た。

Aクラスはもちろん地元の黒原/三戸組、3秒遅れでアルトワークスを駆る黒木/小野組となっている。フラットとはいえ比較的下りが多いステージだったので駆動系による差はあまり出なかったようだ。一方Cクラスであるが、悪天候のため計時がうまくいかずキャンセルとなった。SS2以降は、B山に移動して、上り2本、下り2本のの4SSを消化する。A山からB山に向かう途中、あちこちで倒木や冠水した状況に遭遇し、あらためて、大雨洪水警報の恐ろしさをしってしまう。

SS2は、上り3.8Kである。仕切り直しとなったCクラスは、まず今年エボ9に乗り換えてもの凄く調子のいい山田/村瀬組が241秒で走りきる。次のゼッケンの福本/八尋組は244秒、そういえば今回Cクラスはバリバリの地元はいない。そんな中、北陸より参加の手塚/斎藤組が、山田/村瀬組と同秒でトップタイムをマーク。なんだかんだで昨年のオールスターラリーに参加したクルーがトップタイムを出した形となった。

Bクラスはやはり後藤/古原組がトップそれに4秒遅れて山岡/森組、さらに4秒遅れで、三苫/辻組が追随する形となっている。不本意なタイムを出して納得いかない三苫選手であるが、先日のひむかラリーのときからエンジン不調に悩まされており、今回は対策を行ってきたとのことであるがうまくいっていないようだ。Aクラスは、黒原/三戸組、黒木/小野組が同秒でトップ路面の状況を考えると、黒原/三戸組の大健闘といえるだろう。もう1本、上りのショートSSがあるところが、黒原/三戸組にとって頭が痛いことだろう。

SS3は、途中コンクリート舗装を挟んだ1.7KのショートSSである。Cクラスは今度は山田/村瀬組がトップ(96秒)、1秒差で手塚/斎藤組、さらに1秒差で福本/八尋組が続いた。Bクラスは後藤/古原組(98秒)が2位三苫/辻組をなんと5秒も離すトップタイムをマーク。これはCクラスの福本/八尋組が出したタイムと同じで総合でも3位のタイムである。そして3位には三苫/辻組に遅れること2秒で山岡/森組が続いている。Aクラスは、黒木/小野組だ。黒原/三戸組を1秒抑え、トップタイムをマーク。これで上りは終わりである。SS4、5は逆送となる。このSS4、5を走って、1ステは終了となる。

逆走のため、一旦プール状態となったが、相変わらずの雨のため、車から出てお互いのタイムを確認しあうこともままならず、エアコンの着いていない車での待機はほとんどサウナ状態。濡れるのイヤ、暑いのイヤでとりあえず早くスタートしてほしいと誰もが思っていた。

SS4が始まった。SS4はちょうどSS3の逆送となり距離もほぼ同じである。Cクラスで一番がんばったのは、今となっては10年も前の車になってしまったエボ4を駆る福本/八尋組かもしれない。山田/村瀬組と同じ98秒、1秒差には、手塚/斎藤組、田村/桝谷組がつける。現在ポイントリーダーで有りながら、今回のラリーで1回も名前が出ることのなかった田村/桝谷組がここにきて気を吐いたようだ。

Bクラスはデフォルト状態で後藤/古原組、山岡/森組、三苫/辻組の順。Aクラスは、今度は黒木/小野組が取った。黒原/三戸組を5秒ぶっちぎった。しばらくお休みしていた黒木であるがやっと乗りなれてきたようだ。SS4ゴール後直ぐにSS5が始まる。2ステ最終SSである。Cクラスは、238秒で手塚/斎藤組がベスト。それに240秒で山田/村瀬組、福本/八尋組がつけた。

Bクラスは、ここでやっと三苫/辻組(243秒)がベストタイムを出す。下りなのでエンジンパワーはあまり関係なかたようだ。Aクラスは黒原/三戸組(250秒)が黒木/小野組を4突き放し堂々1位。各車はSS5をゴールするとそのままサービス地点へ帰り、約15分程のサービスを受けた。

ここで各クラスの順位を見てみよう。Cクラスは手塚/斎藤組(675)−山田/村瀬組(675)−福本/八尋組(680)Bクラスは後藤/古原組(970)−山岡/森組(986)−三苫/辻組(988)Aクラスは黒原/三戸組(994)−黒木/小野組(995)、各クラスとも非常に競っている。

最終ステは、2ステの復習。SS1〜SS5までがそのままSS6〜SS10となる。最終ステをスタートした競技車はCクラス:7台、Bクラス:6台、Aクラス:3台で生存率はそれぞれ77%、54%、60%となっている。大雨で痛めつけられたコースは予想以上に競技車にダメージを与えているようだ。
3ステは、クラス毎に戦いを見ていこう。まずは第1SSがキャンセルになってしまったCクラスから。SS1のリピートとなるSS6は手塚/斎藤組(260秒)、山田/村瀬組(266秒)この時点で、6秒差で手塚/斎藤組がトップに立つ。そして、今度は山を移動してSS7。SS7は上りのため、各コーナーにはかなりの深さの轍が刻まれている。荒れた展開になると、やはりベテランが強い。手塚/斎藤組(246秒)に対して山田/村瀬組(250秒)、山田/村瀬組はトータルで10秒差を着けられてしまった。約1.6KのSS8では両者一歩も譲らず99秒。B山を駆け上がったCクラスの競技車はリターンのため全車の通過待ちのため一旦プールとなった。

残すは約1.6KのSS9と約3.8KのSS10のトータル5.4K山田/村瀬組は手塚/斎藤組よりキロ2秒以上早く走りきるか、自滅を待つしかなかった。SS9は山田/村瀬組(100秒)、手塚/斎藤組(102秒)でその差8秒。最終SSに望みを繋ぐ。そして最終SS。ゼッケン3番の山田/村瀬組は243秒で下りきる。次ゼッケンの福本/八尋組にいたってはなんと山田/村瀬組を1秒ちぎる242秒を出してしまった。焦る山田/村瀬組だが、もうどうしようもない。そしてゼッケン6番の手塚/斎藤組山田/村瀬組と同じ、243秒で下りきった。
−−− Cクラス最終結果 −−−
手塚/斎藤組(1625秒)
山田/村瀬組(1633秒)
福本/八尋組(1637秒)

Bクラスは2ステをトップであがった後藤/古原組が2位山岡/森組を16秒離しており、後藤/古原組の実力からして、なんとか逃げ切れそう。それよりも2位争いが面白くなってきた。2位山岡/森組と3位三苫/辻組は2秒しか離れていない。SS6では三苫/辻組が273秒で走りきり、トップタイムをマーク。山岡/森組は281秒であった。これで三苫/辻組が2位へ浮上。三苫の照準は山岡/森組から、後藤/古原組へとスイッチされた。

残るSSは約10K、4SS。後藤/古原組との差は17秒。後藤/古原組としては、うかうかしていられなくなった。戦闘態勢に入った三苫/辻組であるが、なんと次のSS7で不運が襲う。急にエンジンが回らなくなり、クラス最遅でなんとかSSを走りきる。エンジンルームを確認すると、バッテリーが外れていた。しかし、4位とは大きくはなれていたため、なんとか3位転落するだけで済んだ。その後SS8を消化し一旦プールとなると、三苫/辻組は対策を施した。そんな中、回りでタイムを聞きまくっていた選手の一人が、大きな声で「アイツが1位で、こいつが2位で……」と話している。順位やSSのタイムの話を内々でするのは問題ないと思われるが、こうも露骨に本人がいないところでSSのタイムを公言されたりしたらいい気分はしない。ほぼ順位は確定してきてるとは言え、もうすこし紳士的に振舞ってもらいたいと思った。さて、Bクラス残り2本のSSであるが、SS9、10とも後藤/古原組が最速で駆け抜け、一度もトップを譲ることなく優勝した。
−−− Bクラス最終結果 −−−
後藤/古原組(1968秒)
山岡/森組(2001秒)
三苫/辻組(2056秒)

思わぬ伏兵が現れて、1秒差で3ステに突入することになったAクラスであるが、ライバル不在の黒原/三戸組からすれば、張り合いが出てきたのかもしれない。まずSS6を黒原/三戸組が274秒で走りきる。下りとはいえ、格上のBクラスのトップより2秒落ちの会心の走りである。続く黒木/小野組はどうしたことか287秒。何とフロントのドライブシャフトが抜けたという。各クラスが走破した後の路面で、しかもこの悪天候だ。FRと化したアルトでは道の上にいるだけで精一杯だったという。つづくSS7でのインターバルで黒木/小野組は、抜けたシャフトを元に戻した。シャフトが抜けた原因が分かっていないため、不安の残る状態でSS7をスタートせざるをえなかった。

一方黒原/三戸組はこのステージも快走を見せ264秒。格上のBクラスでも2位に相当するタイムだ。黒木/小野組はというと297秒。またまたシャフトが抜けてしまった。どうもパワーを駆けるとシャフトが抜けるらしい。次のSS8も距離が短いとはいえ上りのSSである。黒木/小野組にとっては頭がいたいところである。やはり予感は的中、ここでもドライブシャフトが抜けてしまった。距離が短かったので遅れはそれほど広がらなかったのが幸いである。プール場所での作業も、抜けてしまったドライブシャフトを元に戻すだけで、それ以外の作業は不可能であった。まずは下りの1.6KのSS9である。捨て身で勝負に出た黒木/小野組は100秒のベスト、黒原/三戸組は105秒でった。しかしドライブシャフトはここでも抜けてしまった。SS10は連続して始まるSSのため、黒木/小野組はドライブシャフトを元に戻すことができず、轍で荒れた路面を慎重に下らざるを得なかった。
−−− Aクラス最終結果 −−−
黒原/三戸組(1998秒)
黒木/小野組(2102秒)
広瀬/工藤組(2261秒)


大荒れの天気の中、何事もなく無事にラリーは終了した。ずぶ濡れになりながらイベントの運営にあたった、MSC−SECTの方々のラリーを成功させるという意気込みがそのまま現れたようだ。あらためて敬意を表したい。