自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

九州ダートトライアル選手権最終戦!

竜巻玉子さんから、九州ダートトライアル選手権最終戦のレポートが届きました。本当にモータースポーツの1シーズンはすぐに終わってしまう感じがします。だから歳を取るのも早い……(関係ありませんが、本日は飯嶋の誕生日です)。とにかくみなさんお疲れ様でした!

●2007JAF九州ダートトライアル選手権JMRCオールスター選抜第9戦『CRMCダートトライアル』
●開催日:2007年9月30日(日)
●会場:モビリティおおむた
●レポート:竜巻玉子

残暑が続いていた九州地方であるが、大会当日は一転して肌寒かった。2007JAF九州ダートトライアル選手権も本日が最終戦である。今回のオーガナイザーは、CRMCである。CRMCは全日本ラリーを追う三苫和義選手や全日本ダートラを追う今福和彦選手を有するチームで、走りのレベルが高い競技会が開催されることが期待された。本日天候は曇りである。時折ポツリポツリと降ってくるが、傘を差すべきか悩むような中途半端な降り方である。

9月最後の日曜日のため各地で運動会が参加されたり、すでにチャンピオンが決定したクラスもあるため参加を見合わせる選手が多いと思われたが、50台がモビリティおおむたに集結した。受付はが開始され、各選手たちはゼッケン貼りや、書類に目を通しすわけだが、選手間で何やら悲鳴や動揺が広がっている。なんと今回のコースにフリーターンが設けられており、豪快、ドリフトというキーワードがぴったりのダートトライアラーとしては「どうしよう?」「困った」といった感じである。

■N1クラス
N1クラスは、早々にチャンピオンが決定したため、前回はチャンプ橋本選手(MASH)が、SA1で参戦したり、2位大塚選手(TS大分)が、全日本門前への参戦のため欠席したりと少々さびしい戦いであったが、今回も、橋本選手(MASH)はSA1で参戦し、2位大塚選手(TS大分)も10月7日に行われる全日本ダートラの参戦のためか欠席である。しかし前回優勝した江口選手(RASCAL)、2位に入った宮地選手(BATTER)もエントリーしており、シリーズ上位2名は居なくても、常連組は全てエントリーしている。

1本目、時折ポツリポツリと降る雨の影響で、結構べちょべちょの路面で競技はスタートした。ゼッケン1番は大久保選手(DESIRE)。「どうやってフリーターンを攻略するのだろう?」という他の選手が視線が痛い中無難にまとめ、1分51秒をマーク。続くゼッケン2番の横光選手(TECHO)は、他の選手が視線がプレシャーに感じたのか2本もパイロンを倒してしまった。さらに3番ゼッケンの前回優勝の江口選手もパイロンタッチを犯してしまった。結果1本目は、大久保選手がトップで、それに宮路選手が続く形となった。

1本目終了時のコースオープン時には、どの選手もいつもより念入りにコースを回っていたようだ。2本目がスタートした。天気も時折晴れ間がさすようになり気温も上がり、2駆でも発進時の速度の乗り方がいいように感じる。そんな中、1本目無難にまとめた大久保選手であるが、スピードが乗りすぎてパイロンタッチを犯してしまった。2本目に気を吐いたのは、前回2位だった宮路選手である。1本目はパイロンタッチこそしなかったもののバックギアを使い散惨たる結果に終わったが、今度は誰が見ても「うまい!」というターンを披露し堂々のトップタイムをマークしそのまま優勝した。2位には1本目のタイムで大久保選手が生き残り、3位にはベテランの味を出して江口選手が入った。
−−− 上位入賞者(N1) −−−
1位:宮地 聖(BATTER)1分50秒24
2位:大久 保勇作(DESIRE)1分51秒99
3位:江口 勝彦(RASCAL)1分55秒58

■N2クラス
N2はいつもながら、不成立である。

■SA1クラス
SA1クラスも岡田選手(FMSC)のチャンピオンが決定しているが、このクラスの注目は2位争いである。ポイント的には平川選手(TS大分)の方が河村選手(SECT)を6点差で抑えているが、河村選手は、5戦分の集計であり今回のポイントを全て計上できる。そうなると平川選手がかなりピンチになる。しかし今回は河村選手のチームの会長である古城選手(SECT)がエントリーしており、古城選手がいるといつも成績が残せない河村選手の走りが気になるところである。今回平川選手がエントリーしていないからその点ではリラックスして試合に望めるかもしれない。

1本目は、N1クラスのチャンピオンを獲った橋本選手(MASH)から。いつもの橋本選手の豪快な走りが見られず1分56台。今回のコースは橋本選手でさえ萎縮させてしまったようだ。次は古城選手。見ていて何か走りに張りがない。良くもなく、悪くもなくといった感じである。そんな古城選手だがタイムは橋本選手の1秒遅れであった。最終ゼッケンは河村選手である。先ほどの古城選手に比べ明らかに車の挙動が積極的である。タイムは2位以下を大幅に引き離す1分53秒台である。

2本目、まずはN1チャンピオンの橋本選手から。今回のSA1クラス参戦においてマフラーを換えた橋本選手は見ていてはっきりとアクセルワークの様子がわかる。やはりチャンピオン! 他の人よりアクセルを踏んでいる時間が長い。カン高いエクゾーストノートを轟かせ激走する橋本選手であったが、なんと後半セクションでミスコース!残念な結果に終わった。そして次のゼッケンは古城選手、最近成績が低迷している古城選手であるが今回は1本目終了後、同郷の選手よりアドバイスをもらっていた。そのアドバイスとは「アクセルを踏んでコントロールしていない。」というものであった。低ミュートな路面に慎重になりすぎていたようだ。

2本目はしっかりと踏み生き生きとした車の動きに変わり1分51秒台のベストを出した。その昔(ものすごく昔)山口修選手とR10ワークスを組み暴れまわっていたかつての走りが蘇ったようだ。最終ゼッケンは河村選手である。いつもは古城選手のプレッシャーに負けてしまう河村選手であるが、今回は違う。各コーナーを活きよいよく、しかもスムーズにクリアして行く。最終のフルターンも難なく決めベストの1分47秒。河村選手は今回の優勝でシリーズも平川選手を抜き2番手に浮上した。
−−− 上位入賞者(SA1) −−−
1位:河村 紳司(SECT)1分47秒84
2位:古城 雅春(SECT)1分51秒25
3位:伊藤 悠介(QUCC)1分51秒49

■SC1クラス
参加台数の関係で、今年成立したのは、前回まで8戦中6戦である。成立した70%が有効ポイントとして計上できるため、合計では山下選手(DESIRE)がシリーズチャンプを確定しているが、問題は2位争いである。今回成立すれば有効戦が1戦増えるため獲得したポイントすべてを計上できる。最終戦とはいえ気の抜けない1戦になりそうである。今回、現在ポイント2位の安本選手はエントリーしておらず、ホズケン選手が、がんばればシリーズ2位に浮上できるチャンスである。

1本目、すでにシリーズを決めた山下選手から。山下選手はいつものEP82ではなく今回は同じチームのホズケン選手の駆るDC5でのエントリーである。チューニングの進んだ一際高いエクゾーストノートを奏でスタートして行ったが、いつものEPとはかってが違うみたいで今一リズムに乗れないようだ。…ああリタイヤしてしまった。次は大庭選手のCA4Aを借りてエントリーしてきた新人の石原選手、大会プレッシャーに負けたのかこれまたリタイヤしてしまった。

エントリー5台中すでに2台がリタイヤしてしまったこのクラスであるが、次はアルトの改造車を駆る三好選手、アルトと言えば4駆と思いがちであるがこの車は2駆である。オーバーフェンダー、トレッド拡大と軽ベースの定番の改造をしており、見た目の4駆のアルトの改造車にひけをとらない。しかし、残念ながらパイロンをタッチを犯してしまった。次は全日本にも参戦するホズケン選手、乗りなれた様子で各コーナーをクリアしていく。はやり速い!…しかしフルターンでつかまった。パイロンタッチこそなかったが、何か不完全燃焼な感じでクリアした。このクラスラストゼッケンは大場選手である。ズ太いエクゾーストノートを残して走って行く大庭選手であるがこれまたフルターンで失敗、ホズケン選手に遅れること5秒でゴールラインを切った。

2本目、天候も回復し2駆ベースの改造車でもストレスを感じることなく走ることができるような路面に変わった。まずは三好選手の1分56秒台のベストタイム更新からスタートした。次はホズケン選手である。路面が良くなりDC5のパワーを存分に路面に伝えている。フルターンも難なく決めタイムは1分53秒台。そしてラストゼッケンの大庭選手、さすが大ベテランフルターンをきれいに決めた。タイムは1分53秒だが僅かにホズケン選手を上回り今期初優勝を決めた。敗れたホズケン選手であるが、ポイントの方は加算でき、シリーズ2位へ浮上した。
−−− 上位入賞者(SC1) −−−
1位:大庭 正章(洞海)1分53秒24
2位:ホズケン(DESIRE)1分53秒34
3位:三好 栄蔵(NMC−S)1分56秒18

■SC2クラス
不成立である。

■N3クラス
前回今福選手(CRMC)が、ダメ押しの優勝を果たしチャンピオンが決定したN3クラスであるが、その今福選手は今回は主催である。今回はいつものレギュラー岸山選手(T−MAO)、馬場選手(EMZ)に加え、往年のベテラン原選手(EMZ)がエントリーしてきた。ストーリアで速いところを見せていた原選手であるがエボ7をどこまで操れるか興味を引くところである。

N3クラスは久々登場の原選手からスタートした。ストーリアからランサーに乗り換えてもブランクを感じさせない走りで1分50秒台をマーク。原選手と同じチームの馬場選手は1分49秒台、ラストゼッケンの岸山選手も1分49秒台であった。チャンピオンが既に決まっているとはいえ熱い戦いが繰り広げられている。

2本目、原選手がさらにタイムを縮め1分47秒台にのせた。次の出走は宮川選手(QUCC)である。ダートラとラリーの二束のわらじを履く選手である。1本目は若さの故フルターンで大失敗を犯し下位に低迷してしまったが、2本目はしっかり走りきってくれた。そしてラス前馬場選手である。宮川選手を大きく引き離すベストタイムを更新1分42秒台、そしてラストゼッケンの岸山選手、走りを見ていると馬場選手に比べ多少マシンが暴れているように感じる……タイムは馬場選手と同じ1分42秒台…しかし僅かに馬場選手を上回り今期3勝目を挙げた。
−−− 上位入賞者(N3) −−−
1位:岸山 信之(T−MAO)1分42秒28
2位:馬場 一裕(EMZ)1分42秒67
3位:宮川 優一(QUCC)1分46秒38

■SA2クラス
毎回最多出走台数を誇るSA2クラス。九州地区のレギュラー組に加え、他地区からも遠征がありポイントも争いの方も熾烈を極めている。ポイントリーダーは山倉選手(CRMC)であるが、2位は遠征組の三浦選手(メープル)である。山倉選手と三浦選手の差は10点であるが、有効6戦全て計上している山倉選手に対し三浦選手は5戦分の計上である。地元の意地をかけ、がんばる山倉選手であるが今回は不利な戦いになりようである。前回に引き続き全日本ドライバーの鈴木信地郎選手(REALIZE)もこのクラスにエントリーしており、果たして山倉選手の援護射撃となるかが見ものである。

1本目は三浦選手がパイロンタッチを犯し、余裕でトップを維持することができた山倉選手。チャンピオン獲得に1歩近づいたようだ。2番手はエボ6を駆る山下選手(BIGWAY)である。山倉選手としては山下選手の援護射撃を期待したいところ。

2本目に入ると路面も益々乾き本来の4駆のパワーを十分に生かせる路面状態となった。1本目2番手のタイムを出した山下選手は、なんとタイムダウン。フルターンでバックギアを使ったのが原因である。百戦錬磨のSA2の選手達は山倉選手の援護射撃など関係なくタイムを上げてくる。全日本ドライバーで今回はSA2で参加の鈴木信地郎選手が1分43秒台を出すと次々に1分43秒台を出す選手が続出。そして三浦選手、なんとブッチぎりの1分40秒台を出す。さて最終ゼッケンの山倉選手であるが何となく三浦選手に比べ走りに元気がないように感じる。タイムは1分42秒台。三浦選手は今回の優勝と他地区でのチャンピオン獲得と格好いい形でシーズンを締めくくった。
−−− 上位入賞者(SA2) −−−
1位:三浦 禎雄(メープル)1分40秒95
2位:山倉 英彰(T−MAO)1分42秒00
3位:刀根 義晴(BATTER)1分42秒38

■SC3クラス
今期毎回レベルの高い戦いが繰り広げられたSC3クラスであるが、前回の松藤選手(SRC−Y)の優勝でチャンピオンは決定した。このクラスの参加者は、長年モータースポーツを愛し続ける参加者が多く、「チャンピオンを獲得したら今シーズンは終わり」というのではなく「本当に走ることが楽しくて」という参加者がエントリしている。今回は3台のエントリーであったため不成立となったが、橋本選手、浜田選手、上原選手といったレギュラーメンバーの参加である。競技の方は橋本選手の勝利に終わった。順位は2位浜田選手、3位上原選手の順。彼らには来週(10月7日終了しました)に開かれるタカタでの全日本戦での走りを期待したい。
−−− 上位入賞者(SC2) −−−
1位:橋本 和信(BIGWAY)1分39秒32
2位:浜田 隆行(BATTLER)1分41秒63
3位:上原 吉就(RASCAL)1分42秒94

■Dクラス
シーズン前半は、佃選手(BIGWAY)が3連勝を果たし、佃選手有利に進んだかに見えたDクラスだったが、シーズン後半より江川選手(RASCAL)、岩下選手(RASCAL)が迫ってきた。優勝回数とポイントはそれぞれ佃選手(3回、99点)、江川選手(2回、97点)、岩下選手(2回、95点)である。今回まで全ての試合が成立しており、3選手は、等しく有効6戦分のポイントを計上している。本日の試合でチャンピオンが決定するとあって、一番熱い戦いが繰り広げられるであろうクラスである。先ほどのSA2クラスに続きこちらも白熱した戦いが予想される。

1本目、岩下選手の1分44秒台で競技はスタートした。つづく江川選手は1分48秒であった。他のクラスに比べスピードが乗るDクラスのマシンはフルターンの進入でスピードが乗りすぎ苦労しているようだ。またスピードを落としすぎると今後は荷重移動がままならずなかなか向きが変わらない。そしてラストゼッケンの佃選手も同様フルターンで苦戦し、1分47秒台であった。

そして2本目、3選手ともコースオープンには時間をかけ攻略法を検討したようである。まずは岩下選手が1分40秒台に乗せた。そして江川選手、いつもの江川選手の走りで軽々とコーナーをクリアしていく。中間の最速タイムである。そしてフルターン!活きよいよくパイロンを飛ばしてしまった!そして最終ゼッケンの佃選手、最終ゼッケンであるがゆえ、他の選手の走りを十分に分析できたようだ。最もきれいにフルターンを決めゴールに飛び込んだ。タイムは1分39秒。SA2クラスに続き、これまた優勝とシリーズチャンピオンというカッコいい勝ち方で幕を下ろした。
−−− 上位入賞者(D) −−−
1位:佃 康浩(BIGWAY)1分39秒82
2位:岩下 幸広(RASCAL)1分40秒14
3位:五味 直樹(TGF)1分43秒26

(ポイントの加算に関しては、JMRC九州の規則書に書かれている内容を竜巻玉子が勝手に解釈しております。あくまでも竜巻玉子の解釈であるため、公式なものではありませんのでご了承願います。よってポイント計算に間違いがありましても当方としては責任が持てませんので、疑問を持った方はご自身でJMRC九州まで問い合わせください。)