自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

九州ダートトライアル開幕戦レポート

今年もダートトライアルシーズンが始まった。当ブログは、レポーターの竜巻玉子さんの力を借りて、九州地区のラリー、ダートトライアルを今年もレポートしていく予定。イベント会場で竜巻玉子さんを見かけたら、積極的に情報提供をお願いします。一緒にBライ競技を盛り上げましょう!(飯嶋)

●2008JAF九州ダートトライアル選手権JMRCオールスター選抜第1戦『RASCAL Winter IN Omuta』
●開催日:2008年2月17日(日)
●会場:モビリティおおむた
●レポート:竜巻玉子

まだまだ寒い日が続く今日このごろであるが、2月17日(日)九州ではシーズンが始まった。当日は寒波と放射冷却の影響でよく晴れたが、とても寒い一日となった。そんな寒い日であるが、ダートトライアラー達は待ちに待ったシーズンインということで54台がモビリティー大牟田に集結した。

参加選手達は第1戦ということで、選手同士の新年の挨拶もそこそこに今年からのクラス分けについて、どのような傾向で競技が展開されていくのか不安と期待に多少緊張といった感じである。また第1戦はというと車両規定の関係で車を間に合わせることができず申し送り等が発生することもあるが、今年のダートラにあたってはクラス区分以外に特に問題となるような車両規定の変更はなく、全車スムーズに車検をクリアした。 

JAF地方戦はというと全日本戦とは別に独自にクラスを設けることができるが、JAF九州では基本的に全日本と同じクラス分けとなっている。

・N1クラス
まずは、排気量区別なしの2駆で戦われるN1クラスから。今回は5台がエントリーした。昨年チャンピオンを獲得した橋本選手(MASH)はS2クラスに移籍したが、全日本で優勝してしまった大塚選手(TS大分)をはじめシリーズ2位の宮路選手(BATTLER)もエントリーしている。

昨シーズンポイントの計算を誤って5位になってしまった中島選手(CRMC)はCJアスティーからインテグラにスイッチした。さて競技の方であるが、路面は全体的に若干のウエットでところどころに水溜りがある状態、全車迷わずウエットタイヤをチョイスした1本目、トップタイムをマークしたのは中島選手であった。

2番時計に全日本で優勝してしまった大塚選手を2秒ちぎっている。3番手はセリカを駆る藤原選手(CRAFT)がつけた。1本目が終わったインターバル時に中島選手のところに行くと、ひらすら「ダメッす、ダメッす。」と言っている。トップドライバーはたとえ優勝しても自分の走りに満足しないと言うが、中島選手もそのタイプかもしれない。

雲がかかってきた2本目、まずはセリカを駆る藤原選手から。5秒タイムを縮めトップに踊り出る。それを追う中嶋選手であるが、1歩届かない。何とここで気を吐いたのが宮路選手である。1本目ミスコースをし一人蚊帳の外だった宮路選手であるが、中島選手、藤原選手を抜き去り堂々の1番時計だ。
そうなると一番プレッシャーをかじるのが大塚選手である。その大塚選手はプレッシャーに潰されることなく堂々の走りをし宮路選手のタイムを1秒上回る走りを見せ優勝してしまった。大塚選手には4月に開かれる全日本戦での活躍を今年も期待したい。

そして残念ながら4位に転落してしまった中島選手であるが、今回で九州を走るのが最期になってしまった。4月より就職し大阪か関東に行ってしまう。中島選手はここ2年くらいで物凄く成長した。私は中島選手のことは人物ではなく走りで知った。ちょうど2年くらい前、計時室前のコーナーをきれいなアングルを保って回ったCJアスティーがあった。

その走りは若さというよ洗練されたものであった。また走りだけではなくイベント運営にも尽くし、所属するチームが主催するイベントでは、先輩方々のバックアップもあり競技長も務めた。このような若者が九州から去っていくのは辛いがきっとどこかで活躍してくれるに違いない!!
−−− 上位入賞者(N1) −−−
1位:大塚 晋祐 (TS大分) 1分41秒062
2位:宮地 聖  (BATTLER) 1分42秒813
3位:藤原 薫  (CRAFT) 1分43秒077

・N2クラス
1600CC以下の4駆で繰り広げられるはずのN2は今年も不成立である。このクラスは軽4駆、ストーリアが主力車種となるが、私の知る範囲ではそのような競技車はないし、「創った」という話も聞かない。もしかしたら今年も全戦不成立になるかも知れない。

・N3クラス
次は1600CC以上の4駆で戦われる、本来ダートラの主流となるべきはずのN3クラスである。今回は3台しかエントリーがなかった。N3クラスの参加者が少ない原因は私なりに前回のレポートで述べさせてもらったが、今年もこの傾向が続くようである。

昨年のシリーズチャンピオンの今福選手(CRMC)は、今回はなぜかランサーでS3クラスにエントリーしている。となると優勝争いの方は昨年シリーズ2位の岸山選手(MAO)と同じく3位の馬場選手にしぼられることになりそうである。

1本目は昨年タカタで行われた西日本フェスティバルの鬱憤を晴らすかのごとく快走した馬場選手(EMZ-SPORT)が一番時計で、岸山選手がそれに続く形となった。路面は大分よくなったが雲行きの方がだんだん怪しくなった2本目、馬場選手がさらにタイムを縮め、必勝体制に持ち込んだが・・・。

岸山選手がさらに上回るタイムを出し逆転優勝してしまった。馬場選手も岸山選手も同じランサーを駆っているが、走らせ方が異なっている。馬場選手はしなやかに走るタイプで、岸山選手はアグレッシブに走るタイプである。1本目のように路面状態がルーズな状態では馬場選手のしなやか走りに軍配が上がり、2本目路面状態が良くなるとアグレッシブに走る岸山選手の方が有利になったようだ。
−−− 上位入賞者(N3) −−−
1位:岸山 信之 (MAO) 1分37秒470
2位:馬場 一裕 (EMZ-SPORT) 1分38秒104

・S1クラス
1500CC以下の2駆で戦われるS1クラスも不成立である。GAシティーやEP82NAなどのラリー車が使えると思うが、こちらもN2クラスと同様もしかしたら全戦不成立かも?

・S2クラス
1500CC以上の2駆およびSA車両およびSC車両で戦われるこのクラスは、S4クラスと並んで本日最多の13台がエントリーしてきた。S2クラスはSA車両とSC車両の混走となることからどのような戦いになるか興味津々である。

SA車両では去年のシリーズチャンピオン岡田選手(FMSC)をはじめ、N1クラスで早々にチャンピオンを決めシーズン途中からSAクラスで走るようになった橋本選手、さらにはオールスターラリーで自分の指を潰しながら優勝した寺川選手(DESIRE)とツワモノ揃いである。

SC車両ではテクニシャンのホズケン選手(DESIRE)をはじめEP82でチャンピオンを取った山下選手(DESIRE)がインテグラで、そして大ベテラン大庭選手(洞海ASC)とはっきり言って誰が勝つかまったく分からない状態。

そんな緊張感に支配されているS2クラスの選手達であるが一人笑顔の選手がいた。寺川選手である。寺川選手は「爪が生えてきたんですよ!」とかつて重症を負った指をみんなに見せている。ハンドルを握った感じはまだ若干の違和感があるとのことだが、指先より路面の状況が把握できるようになった喜びをあらわしていた。

さて1本目、1番時計はやはりこの人、岡田選手であった。2位を約1秒離している。その2位が橋本選手(MASH)である。クラスを移籍しても速いところを見せている。そして3番時計はホズケン選手がつけた。今回は1本目と2本目の間のインターバルに散水が行われなかったため、路面は大分良好になった。

しかし、S2の各選手達は安全策を取りそのままウエットタイヤで2本目を迎えた。まずはあまりダートラに参加していないためゼッケンが若い寺川選手から。約5秒のタイムアップを果たし、タイムを1分41秒台に載せた。もちろんトップタイムである。そして橋本選手、いつもアグレッシブな走りで華麗に攻める走りは健在であるが!・・・今回はその橋本選手の走りに車がついていくことができずコース終盤でストップしてしまった。

さらにホズケン選手も奮わず寺川選手に追いつけない。ラス前ゼッケンは山下選手である。EP82の改造車からインテグラに乗り換えたわけだが、EP82に比べ安定した走行性能を持つインテグラを巧みに操り寺川選手と同秒に載せるが、100分の3秒届かない。ラストゼッケンは岡田選手である。

昨年より乗りなれたEK9を操りコーナーをクリアしていく。昨シーズンはS字の揺り返しなど、多少モッサリ感を感じたが、今年はヒョイっヒョイといった感じである。車もかなり熟成されているようだ。そんな岡田選手の走りが見事に調和し寺川選手を1秒ちぎり優勝してしまった。岡田選手も大塚選手同様、全日本の九州ラウンドを制覇してもらいたい。
−−− 上位入賞者(S2) −−−
1位:岡田 晋吾 (FMSC) 1分40秒772
2位:寺川 和紘 (DESIRE) 1分41秒654
3位:山下 雅博 (DESIRE) 1分41秒684

・S3クラス
S3クラスは、1600CC以下の4駆のSA、SC車両で戦われる。参加メンバーは昨年とほとんど変わっていないが、今年から岩崎選手(TS大分)が加わった。昨年とほとんどメンバーが変わらないと言っても、今回は昨年のチャンプ首藤選手(RC大分)は参加していない。

しかし同じくシリーズ2位の永田選手(DESIRE)は参加している。となると今回は永田選手有利な展開が予想される。1本目にトップに立ったのは永田選手で、2位の今井選手(DESIRE)のアルトを4秒も引き離している。今回の参加車両の中でSC車両は永田選手だけで他はSA車両である。車の性能がそのまま成績に現れたようだ。2本目も永田選手が2位今井選手を5秒ちぎり幸先のいい優勝を決めた。
−−− 上位入賞者(S3) −−−
1位:永田 誠 (DESIRE) 1分41秒518
2位:今井 利光 (DESIRE) 1分46秒941
3位:大渕 太郎 (MAO) 1分50秒183

・S4クラス
1600CC以上の4駆のSA車両で戦われるこのクラスは、去年のSA2クラス同じである。そのため参加メンバーも昨年と変わりないようである。

エントリーの方は、昨年地元勢を破りチャンピオンを決めた三浦選手(FRCM)をはじめシリーズ2位に山倉選手(MAO)、そしてもうひと方関東からアキマ選手(CMSC神奈川)が、また今回いつもはN車両で戦う今福選手(CRMC)が全日本でも活躍する小山選手(RASCAL)のパープルカラーのランサーでレンタルして参加してきた。ベテラン揃いのこのクラスがどのような展開になるのか誰もまったく分からない状態である。

1本目は4駆勢にとってはっきり言ってタイヤ選択に悩む状態、DL勢は迷わず86RWと言った感じだが、BSやYH勢にとっては安全策を取るか、気持ちよく走るかと言った選択をしなければならなかった。そんな中、1本目にトップタイムを何と今福選手であった。今回はレンタル車、初めての車、ということで日ごろの精鋭がかけるような感じの走りであったが結果オーライだったようだ。

そして2位はこのところ1本目は成績のいい児玉選手(R-10-N)である。昨シーズン後半にボディー補強とデフのOHをしてから走りも勇ましくなっている。そして3位は昨年の覇者三浦選手である。2本目になるとこのクラスでは完全にドライタイヤと思える路面に変わった。

ゼッケン順では児玉選手から。1本目好調だった児玉選手が2本目ドライタイヤに履き換え、さらにアクセルを踏み込んだ・・・。しかし気合が仇となりあちこちミスが目立つ。タイムは若干UPしたが1本目に今福選手の出したタイムを破ることはできなかった。そんな中ひときわ艶のあるきれいなエボ6が走り出した。

数年前シビック使いとして名を馳せた刀根選手(BATTLER)である。シビックで活躍した後、数年の充電期間を置き、昨年よりエボ6を引っ提げて復帰してきた。優勝こそ無いものの3〜6位と言った安定した順位をキープしていた。

1本目最下位という自分でも納得いかない成績だった刀根選手であるが2本目は生き生きしている。車の挙動も安定している。12秒UPの1分35秒台を出してしまった。次の出走は今福選手である。1本目は借り物の車で踏みすぎた反省からか1本目よりタイムを落としてしまった。そして山倉選手、計時室前のコーナーをクリアして1速→2速へシフトアップした瞬間何か変な音がした。そのまま便所コーナーの方へ走り去った山倉選手だが、ストップしてしまった!!。

ラストは三浦選手である。三浦選手らしいクレバーさと大胆さをかねそろえた走りをするが刀根選手に1歩届かず2位となった。3位には関東から遠征してきたアキマ選手が入賞した。
−−− 上位入賞者(S4) −−−
1位:刀根 義晴 (BATTLER)  1分35秒731
2位:三浦 禎雄 (FRCM)         1分36秒377
3位:アキマただゆき (CMSC神奈川) 1分36秒780

・Cクラス
排気量区分なしの4駆でSC車両で戦われるこのクラスは昨年は松藤選手(SRC-Y)がチャンピオンを取ったわけだが今回はエントリーしていない。しかしシリーズ2位だった橋本選手(BIGWAY)はエントリーしており橋本選手を中心に競技が展開されると思われる。

1本目に1番時計を出したのはもちろん橋本選手で、2番時計の古川選手(SRC-Y)を2秒離している。このクラスは5台のエントリーがあるわけだが橋本選手がCP9Aのベース改造車で後はCD9A、GC8、CC4Aという数世代前のベース車を使っておりなかなか厳しい戦いを繰り広げている。

その中でも特筆すべき点は古川選手であろう。CC4Aベースの改造車で2秒差まで迫っている。古川選手のCC4Aは昨年のチャンピオン松藤選手が手がけたものである。その松藤選手も去年はCD9Aベースの改造車で戦った。松藤自動車の粋を集めた傑作車はここに来てようやく煮詰められたようだ。
そして2本目、ほとんどドライと言っていいほどのコンデションになった路面はテクニックよりもパワーが有利になったようだ。良くなった路面にパワーを食われた古川選手は1秒タイムアップするのがやっと。1本目に橋本選手が出したタイムを破ることはできなかった。その橋本選手だが、2本目もきっちりと決めさらにタイムアップも果たし完全勝利という形で勝負を締めくくった。
−−− 上位入賞者(C) −−−
1位:橋本 和信 (BIGWAY) 1分34秒327
2位:古川 裕一 (SRC-Y) 1分37秒163
3位:清田 稔 (DRC-T) 1分42秒078

・Dクラス
いつもは大挙して改造車を走らせているアルテック軍団は今日は主催のため参加できず、クラス成立が危ぶまれたが、昨年のシリーズチャンピオン佃選手(BIGWAY)をはじめ、昨年タカタで行われた西日本フェスティバルでオーバーヒートを起こし欲求不満のままオフシーズンを過ごした岩本選手(MSC伊万里)がランサーで、そしてドライビングを見たら女性とは思えない走りをする松藤かーちゃん(SRC-Y)が去年のとーちゃんの車でと話題性に富む選手達がエントリーしてきた。

そんな状態で迎えた1本目、1番時計を出したのはやはり佃選手であった。2番手はダートラではあまり見かけない平木選手である。平木選手は走ることよりもオフィシャルとしてイベントに参加することが多くモビリティ大牟田で開かれる全日本ダートラやジムカーナでは若い人をまとめ指導している。

今日も「オフィシャルで来ているのであろう。」という周囲の思いを裏切りドライバーとしても速いところを見せつけた。2本目になると平木選手の走りに益々磨きがかかり、1本目に佃選手が出したタイムを上回ってしまった。平木選手が出したタイムは偉大で岩本選手、松藤かーちゃんも破ることはできなかった。

パドックでは「もしかしたらもしかするんじゃない?」という会話が聞こえる中、佃選手がスタートした。佃選手は今年は新たに車を新造し今回がシェイクダウンだった。1本目ある程度感覚をつかんだ佃選手であるが路面がよくなり速度が増すと煮詰められていない部分が出てきたようだ。コントロールを失い土手にクラッシュしてしまった。
−−− 上位入賞者(D) −−−
1位:平木 勝己 (TOBIUME) 1分38秒525
2位:佃 康浩 (BIGWAY) 1分38秒702
3位:岩本 洋介 (MSC伊万里) 1分40秒679

今大会の結果、およびポイントはJMRC九州のHPでご確認願います。
http://www.jmrc-kyushu.gr.jp/