自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

九州ダートトライアル選手権第2戦レポート

ラリー&ダートラレポーターの竜巻玉子さんから、九州地区ダートトライアル第2戦のレポートが届きました。プレイドライブ復刊とともに、レポーターとしてはとりあえず休業? の意向ということで、私の心境としては微妙なところです……。九州地区ラリー開幕戦までは、当ブログにレポートを掲載する予定となっています。(飯嶋)プレイドライブの復刊については、私は正式情報としては聞いてません。

●2008JAF九州ダートトライアル選手権JMRCオールスター選抜第2戦「MAOダートフェスタ IN モビルティおおむた」
●開催日:2008年3月9日(日)
●会場:モビリティおおむた
●レポート:竜巻玉子

九州では、雪のマークが消え雨のマークになった。啓蟄を迎えすっかり春らしい陽気になったが、当日の天気予報は曇りのち雨というものであった。2月17日に開幕した九州ダートトライアル選手権は、今日ですでに2回目、シーズンINより駆け足でシリーズを消化していっている。そんな雨の降りそうな天気の中、モビリティおおむたには、開幕戦よりもちょっと寂しい47台がエントリーしてきた。会場に着いた選手達は、誰もがウエット用のタイヤへ交換していた。

・N1クラス
開幕戦では5台のエントリーであったが、今回は2台増えて7台がエントリーしてきた。開幕戦で優勝し幸先のいいスタートを切った大塚選手(TS大分)をはじめ、2位だった宮路選手(RTバトラー)、そして3位に入賞した藤原選手(CRAFT)、さらに開幕戦では主催であった江口選手(RASCAL)がエントリーしてきた。また昨年度のJrのチャンピオン青山選手(TS大分)など今期このクラスのレギュラーメンバーと思えるエントラントが集結した。それと開幕戦では残念ながら九州のイベント最後とお伝えした中島選手(CRMC)が荷造りの合間をを縫ってエントリーしてきており、今日が本当の最後ということである。

路面の方は、雨は降っていないが、散水の影響で完全なウエット状態である。先ほど、紹介した選手の中でゼッケンが1番若いのは、青山選手(TS大分)だ。Jrチャンピオンという肩書きを引っ提げてCh戦に殴りこみをかけた。タイムは1分21秒である。参考タイムとなるため、今の段階では、速いのか、遅いのかわからない。次は中島選手(CRMC)である。洗練された走りをする中島選手(CRMC)は派手さはないが、着実に車を前に進め1分17秒台をマークした。

その後、江口選手(RASCAL)、宮路選手(RTバトラー)、藤原選手(CRAFT)が出走するが、中島選手(CRMC)のタイムを破ることはできない。ラストゼッケンは大塚選手(TS大分)である。さすが全日本選手の貫禄で中島選手を1秒リードし1本目のベストを獲った。

2本目は天気予報どおり雨が降ってきた。「1本目のタイムで決まりだな。」と思えたのもつかの間、青山選手(TS大分)がタイムを縮めてきた。あきらめムードが漂う中、この青山選手(TS大分)が出したタイムが元で他の選手も俄然やる気が出てきたようだが、誰も1本目のタイムを縮めることができず1本目のタイムで成績が決まってしまった。

開幕戦で4位となり不本意な順位で九州を去ることになる予定だった中島選手(CRMC)であるが、今日、2位という成績を残し良い思いでになったと思う。ガンバレ中島選手。丸和は怖いぞー。
−−− 上位入賞者(N1) −−−
1位 大塚 晋祐(TS大分) 2分16秒844
2位 中島 有彦(CRMC) 2分17秒626
3位 藤原 薫(CRAFT) 2分19秒106

・N2クラス
N2クラスは、開幕戦に引き続いて参加者がなく、不成立であった。
今年も不成立かな・・・。

・N3クラス
実は、今回N3クラスも不成立となってしまった!!N3クラスのレギュラーの今福選手(CRMC)、岸山選手(MAO)、馬場選手(EMZ)は本日S4クラスでエントリーしている。ダートラの花形クラスなのになんとも寂しい限りである。

・S1クラス
開幕戦では、参加がなかったS1クラスであるが、今回は参加があった。宮谷選手がドライブする、きれいなスズキスポーツカラーのスイフトである。たった1台のエントリーのため勝負するということはなかったが、今年から新設されたクラスでもあるし、モータースポーツの活性化のためにも宮谷選手(EMZ)にはがんばってもらいたい。このクラスは新車で造っても200万程度に収まるとのことなので、新参者が大挙してエントリーしてくることを期待したい。
−−− 上位入賞者(S1) −−−
1位 宮谷 宏(EMZ) 2分34秒625

・S2クラス
今回最多の13台がエントリーしてきたこのクラス、開幕戦の勝者岡田選手(FMSC)、同じく2位だった寺川選手(DESIRE)をはじめ全日本シードゼッケンを持つ古賀選手(DESIRE)もエントリーしており、本大会で1番選手層が厚いクラスと思われる。曇り空の中、先頭ゼッケンは何と古賀選手(DESIRE)。古賀選手(DESIRE)は昨年全日本をメインに戦ったため、九州でのポイントがなくこの位置になってしまった。それだけこのクラスは実力者揃いというわけである。

その古賀選手(DESIRE)だが、いきなり2分16秒台のタイムを出す。このタイムはN1で大塚選手(TS大分)の出したタイムと同秒である。古賀選手(DESIRE)の走りを見ていつも思うことだが、ハンドル回しが大変うまい。「すばやく、的確に」まわしている。あたりまえのことだが、このあたりまえのハンドル回しができていない選手が多いように感じる。他の選手を見てみるとハンドルで体を固定しながらハンドルを回している。ハンドルを回しながらGに逆らうように身体を傾けたり、カウンターを当てるとき逆手になったりしている。つまりハンドルから手を離すことが怖いからこのようなハンドルの回し方になるのである。思い当たるフシのある人はもう一度ドライビングポジションを再確認して方がいいかもしれない。

話がそれてしまったが、S2クラスのその他の実力者と言えば橋本選手(MASH)だ。開幕戦では実力があるにもかかわらずマシントラブルにより下位に低迷してしまったが、今回は荒れた路面をもろともせず、いつものアグレッシブな走りで果敢に攻めている。古賀選手(DESIRE)に遅れること約1秒で2番手に着けた。

そして寺川選手(DESIRE)、今回はエンジンが壊れたとのことで代わりのマシンをレンタルしてきた。寺川選手(DESIRE)といえば指の怪我で有名だが(?)もう指は大丈夫とのことである。レンタル車ということで遠慮したせいかタイムはトップから3秒落ちの2分19秒台。

ラストゼッケンは開幕戦の覇者岡田選手(FMSC)である。開幕戦ではサスペンションが熟成されていると報告したが、今回のような路面がルーズな状態であればさらに良い方向に結果が出るはずである。島周りや揺り返しなどEK9のもっさりとした動きではなくキビキビと動いている。しかしジャンプ台から海側へと続く最高速ストレートでの伸びがイマイチと感じた。タイムは橋本選手から遅れること1秒で、1本目は3位で終了した。

2本目となるとN1の時に比べさらに雨脚が強くなり路面も荒れた為、全車タイムアップすることができず1本目の成績がそのままリザルトになった。
−−− 上位入賞者(S2) −−−
1位 古賀 徹(Desire) 2分16秒343
2位 橋本 英樹(MASH) 2分17秒287
3位 岡田 晋吾(FMSC) 2分18秒374

・S3クラス
開幕戦では5台ギリギリでなんとか成立したこのクラスであるが、今回は開幕戦からレギュラーに加え昨年チャンプの首藤選手(RC大分)がエントリーしてきた。となると勝負の行方は開幕戦の覇者永田選手(DESIRE)と首藤選手(RC大分)に絞られるのが当然の成り行きだろう。開幕戦を欠場したとはいえ最終ゼッケンは首藤選手(RC大分)である。まずは永田選手(DESIRE)が出走した。昨年散々トラクション不足に悩んでいた永田選手(DESIRE)だが、今年は明らかに車が速くなったようだ。パワーを確実に路面に伝えている。

今回のコースはコース委員長(MAOの山倉選手)の性格がそのまま出たようなコースのため、軽自動車ベースの改造車は転倒の危険が大であるがストーリアベースの改造車を駆る永田選手(DESIRE)はベース車両の利点をうまく生かし2分17秒のタイムをGETした。つづいて首藤選手(RC大分)である。首藤選手(RC大分)の車両はアルトがベースになっているが、トレッドを拡大しており思い切ってコーナーに入って行ける。いつものように「えーっ!」というスピードで次々にコーナーをクリアしていく。首藤選手(RC大分)は昨シーズン終わってから本日まで一度も競技車には乗っていないと話していたが、そんなブランクは感じさせない走りである。何と永田選手(DESIRE)と同秒でゴールしてしまった!

2本目となるとますます雨がひどくなってきた。今までの2駆のクラスではタイムアップができず1本目の順位で成績は決まっていたが、このクラスはどうだろう。永田選手(DESIRE)はコース中盤でリタイヤしてしまった。1本目はかろうじて首藤選手(RC大分)が勝っていたため首藤選手(RC大分)は走らずに勝負がついてしまった。でも首藤選手は元気よくスタートしていったが・・・これまた水を吸い込んでリタイヤしてしまった。今回永田選手(DESIRE)、首藤選手(RC大分)とも不完全燃焼だったようだが、今年も永田選手VS首藤選手の戦いが繰り広げられるだろう。

−−− 上位入賞者(S3) −−−
1位 首藤 英明(RC大分) 2分17秒141
2位 永田 誠(Desire) 2分17秒554
3位 神山 久王(BSK) 2分32秒425

・S4クラス
九州では、S2クラスと並んで参加台数が多いS4クラスである。開幕戦では13台のエントリーがあったが、今回は9台のエントリーである。本日は開幕戦で2位に入った山倉選手(T−MAO)が、いつも九州に遠征してくる三浦選手(RCメープル)が欠席しただけで、開幕戦の覇者刀根選手(RTバトラー)、かつて全日本にシードゼッケンを持っていた小山選手(RASCAL)をはじめ九州のレギュラーメンバーが顔をそろえた。

また今回N3クラスが不成立となったため、いつもはN3で戦う今福選手(CRMC)、馬場選手(EMZ)がN3仕様のままエントリーしてきた。小雨の降る1本目、さすがにパワーと安定感を持ったマシンたちである。速いゼッケンの選手がいきなり3台つづけて2分11秒台を出す。この中にはS4クラスに混じってN3車両の馬場選手(EMZ)もいる。次は小山選手(RASCAL)である。あっさりと2分9秒台をだしてしまった。

そして今福選手(CRMC)、N3仕様でありながら2分9秒台をマークした。今回はS4とN3の混走となっているがS4だからとか、N3だからとかいうハンデはなさそうである。最終ゼッケンは開幕戦の覇者刀根選手(RTバトラー)である。あいかわらず車の動きがものすごくいい。決してアグレッシブではないが、スムーズで速い走りを見せ2分8秒台をマークした。

2本目はかなり雨脚が強くなり全車タイムアップができず、1本目の順位がそのまま成績となった。今回参加台数の関係でN3とS4が混走となったわけだが、本日のようなコンディションだったら車の差はでなかったようである。次戦は混走になるかはわからないが路面状態がよくなれば車の差が出てくるかもしれない。
−−− 上位入賞者(S4) −−−
1位 刀根 義晴(RTバトラー) 2分8秒369
2位 今福 和彦(CRMC) 2分9秒380
3位 小山 茂樹(RASCAL) 2分9秒391

・Cクラス
Cクラスのレギュラーである、実力者上原選手(RASCAL)、岩下選手(RASCAL)は前戦は主催であったため、橋本選手(BIGWAY)が勝ったが、本日は上原選手(RASCAL)、岩下選手(RASCAL)ともにエントリーしている。今年新造したマシンで戦う橋本選手(BIGWAY)にとって昨年より熟成されているマシンで戦う、上原選手(RASCAL)、岩下選手(RASCAL)は脅威に見えたに違いない。

小雨のぱらつく1本目、岩下選手(RASCAL)がいきなり2分7秒台を出す。エボ7ベースの改造車を駆る岩下選手(RASCAL)の車はエボ7以降に共通して見られる重そうな挙動がなく改造車らしいキビキビした挙動でコーナーをクリアしていた。そして橋本選手(BIGWAY)、新造したマシンゆえ開幕戦では古川選手(SRC−Y)に詰め寄られ薄氷を踏む勝利を得たわけだが、今回は大分セッティングの方も煮詰まってきたようだ。モビリティ大牟田のコースを知り尽くした走りで各コーナーをスムーズに駆け抜けていく。岩下選手(RASCAL)と同じく2分7秒台を出すが、残念ながら僅かに及ばなかった。

Cクラスも他のクラスと同様2本目は雨脚が強くなり全車タイムアップをはたすことができず1本目のタイムがそのまま成績となった。
−−− 上位入賞者(C) −−−
1位 岩下 幸広(RASCAL) 2分7秒241
2位 橋本 和信(BIGWAY) 2分7秒949
3位 上原 吉就(RASCAL) 2分9秒101

・Dクラス
開幕戦で優勝してしまった平木選手(TOBIUME)は今回お休みであるが、開幕戦では主催だった江川選手(RASCAL)が今日からシーズンINということでエントリーしてきた。また開幕戦では新造したマシンでセッティングの十分に進んでいたいため土手にヒットした佃選手(BIGWAY)は今回はエボ7ベースの改造車を準備してきた。また若手の浜田選手(RTバトラー)もエントリーしてきておりフルメンバーがそろった状態である。

まずは若手期待の浜田選手(RTバトラー)が出走する。小雨がパラついている状態であるが、ドライ用にタイヤでコースへ飛び出していった。しかしこの路面でドライタイヤでの出走は無謀だったのかもしれない。車は前に進んでいないようだ。Cクラスのマシンより遅れを取り、2分10秒台でゴールした。次は江川選手(RASCAL)である。江川選手もドライ用タイヤをチョイスしても出走であったが、明らかに気迫が違う。

1本目は流して走る選手が多い中戦闘モードで攻めている。ぶっちぎりの2分5秒台をたたき出してしまった。ラストゼッケンは佃選手(BIGWAY)である。開幕戦で土手にヒットさせ急慮エボ7ベースの改造車を持ち込んだわけだが、突貫工事で作成した車らしくかろうじて改造車の基準を満たしているという状態。

セッティングもまだまだのようでその重重しい挙動はナンバー付きとあまり変わらないようだ。タイムも期待されたものではなく、シェイクダウンのための様子見といった感じだった。Dクラスも他のクラスと同様2本目は再び雨がひどくなり全車タイムアップすることができず1本目の成績で順位が決まった。
−−− 上位入賞者(D) −−−
1位 江川 博(RASCAL) 2分5秒060
2位 浜田 隆行(RTバトラー) 2分10秒450
3位 松下 静巳(AMORE) 2分11秒423

今大会の結果、およびポイントはJMRC九州のHPでご確認願います。
http://www.jmrc-kyushu.gr.jp/

今回は天候のため1本目の成績で勝負がついてしまったが、参加者の走りを見ていて疑問に思う。2本目は当然雨が降ることが予測できているのにどうして1本目から思い切って攻めないのだろうか?全日本選手は1本目から死ぬ気で踏み、2本目は1本目で失敗したところや走ってみて気づいた部分を修正しながら走ると言う。「1本目から死ぬ気で踏む」というのは、2本目は突然雨が降るかもしれないし、散水の影響があるかもしれないし、また何らかの車両トラブルに見舞われる可能性があるかもしれないというリスクがあるからという。せっかくお金を払ってエントリーしているのだから、流したような走りはせず、一球入魂というか一本入魂の精神で走ってもらいたいと思った。