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『官僚利権』紹介

★特別会計の使い道を監視し、真の財政再建への工程を示す力作

菅直人首相が就任直後に「官僚こそが政策や課題を長年取り組んできたプロフェッショナルだ。官僚を排除して政治家だけでモノを考え決めればいいということでは全くない」と発言し、実質、官僚に歩み寄ったという見方もできる民主党政権。

そんな中で『官僚利権』を読んだ。著者は共同通信ニューヨーク特派員、東北公益文科大学大学院特任教授などの経歴があるフリーランスジャーナリストの北沢栄氏だ。

本書は特別会計の詳細な説明から切り込んでいく。特別会計とは一般会計とは別に設けられた会計で、外交、防衛、教育など国の基本的な経費と分けて、特別の必要から区分経理している会計だ。

いびつなのはその構造。歳出・純計ベースで特別会計は一般会計の約5倍の規模を持つ。そして借金漬けの一般会計、多くの資産を持つ特別会計という逆転現象を起こしている。
その特別会計の多くが、各省庁のポケットに入っている。自由に使えるサイフといえるだろう。そして、ここに「霞ヶ関埋蔵金」も含まれている。

現在のシステムでは、すべての官僚がトップに上り詰められるわけではない。早期退職した官僚には、次の就職先=天下り先が用意されることになる。天下り先とは、独立行政法人であり、公益法人(財団、社団)であり、その傘下にあるファミリー企業であったりする。

特別会計はこうした法人への「指定席」の見返りとしての持参金的な色合いもあるだろう。それら法人は一見独立しているようだったり、法的には民間に位置づけられていても官に依存している。さらに特別会計という自由に使えるサイフがあるために、こうした一連の法人は規律が緩みがちだ。そこにあるお金を無理やりに使ってしまおうとするか、巧妙(複雑?)なベールで覆い、お金を溜め込む。

いわゆる「霞ヶ関埋蔵金」は伝説から現実のものとなり、実際に一部は表面に出てきたが、まだまだ使える金があると著者は言う。政府や学者が「一度使ったらそれっきり」というストックの考え方であるのに対し、著者はストックはもちろん、フローで使える埋蔵金がいままで言われているよりもかなりの多額に上ることを、詳細なデータとその分析により明らかにしている。

そして、埋蔵金を十二分に活用することにより、年金や医療、介護保険など、不足する社会保障財源に活用し、官の息が掛かっていない民間企業に活力を与え、真の財政再建への工程を示している。

以上は、本書のエッセンスのごく一部に過ぎないが、複雑怪奇な特別会計と、それをベースにした官僚利権を解き明かす力作と言える。
(北沢さん、難しかったです……。)