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恩人の死を通して考えたこと

7月7日のことになるが、私の恩人とも言えるSさんが肺がんで亡くなった。享年68歳だった。亡くなる3週間くらい前に病院にお見舞いに行って、話をしたのが最後となった。そのときは相変わらずのわがまま&頑固ぶりを発揮していたので、まだまだ大丈夫だろうとタカを括っていたのだが、7月5日に退院して、2日後に永眠された。

このSさんの退院についてひと悶着あった。とりあえず入院しているのなら安心なのは間違いない。しかし、現在の医療制度の中では急性期の治療を終えた患者の場合、入院が長引くほど病院の収入が減るしくみになっているから、いやおうなく退院の日が近づいてくる。これはシステムの問題だから、病院のせいではない。

Sさんには血を分けた娘さんがいる。ただし、戸籍上の親子関係はない。20年くらい前(推測)にSさんは離婚しており、親権はお母さんにあるからだ。とはいえ、娘さんにとってSさんはかけがえのない父親であることは間違いない。ただ、娘さん自身にも家庭もあれば、仕事もある。そんななかで病身の父親のお世話をするというのは、並大抵のご苦労ではなかったはずだ。Sさんの退院後は、その負担がさらに娘さんの負担としてのしかかってくる。この辺もSさんの退院後の心配の一因となっていた。

まず、私に知人のAさんからの電話があった。Aさんは、私の友人であり多忙の中で、Sさんのところにこまめにお見舞いに行って状況を知らせてくれたり、Sさんの娘さんへの連絡役を引き受けてくれていた人だ。電話の内容の主なものを私が理解した範囲で書くと、ひとつ目は市で行っている高齢者緊急通報、火災安全システム設置サービス(緊急通報システム)についてだった。これは簡単に言えば緊急の場合、ボタンを押せば、SOSが発信されるシステムだ。事前にSさんの娘さんが市役所に行き、説明を受けてきたが、いまいち納得がいかないということだった。

設置するまでに2ヵ月という期間がかかってしまうこと。その間に病身のSさんに何かあったらという心配がある。さらにもう一つは、このシステムを装着したからといって、必ずしも救急車が来るとは限らないと言われたらしいことだ。

ふたつ目は病院の方の懸念で、Sさんが退院後、外来でモルヒネを処方されると聞いていて、そのような麻薬を一般的に外来で処方するものなのだろうか? ということだった。もちろん根本には、なぜ十分に回復していないのに退院させてしまうのだろうという面があったのも事実だ。

私は、派遣社員で市役所に勤めていた関係があったり、雑誌で闘病記の「構成」をしていた関係があったりしたので、連絡を受けたのだろう。まずは、市役所に緊急通報システムについて内容を問い合わせ、さらにモルヒネについて親しい看護師さんに聞いてみることにした。

余談だが、これと同時進行で私には心配事項があった。妻が健康診断の乳がん検診のエコー検査で引っかかり要受診ということになっていた。エコーのエビデンスは検証中という事実は頭ではわかっているものの、いざいちばん身近な人間に降りかかってくると平静ではいられない。私はJ大学病院の乳腺外科での受診を妻に勧め、精密検査をすることになった(続く)。