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書評『若年性乳がんになっちゃった! ペコの闘病日記』 


 この本は、同名のブログ『若年性乳がんになっちゃった! ペコの闘病日記』の中から主だった記事をピックアップし、それに加筆等を加えたものだ。安易にブログをそのまま単行本化したものとはちがう。内容はもちろんだが、作りとしても各章のトビラ(はじまり)ページには、ブログからの抜粋が印象的に使われ、本文欄外に医療用語の解説などがついており、他のブログ本とは一線を画していると思う。 著者は、学生時代にシナリオライターを目指したというだけに文章も読みやすく、本来は辛い闘病生活をさらりと読ませてしまうものに仕上がっている。
 実は、私はブログの単行本化が決定したと著者から聞いたとき、正直にいって、「まとめるのは大変だろうなぁ」という気持を持っていた。 もちろん、同ブログは絶大な人気を持っているし、「読ませる」内容はある。ただ、一冊の本になった時のイメージがわきにくかった。単行本にするのなら、ブログ内からかなり厳選した記事のチョイスと、それに対する加筆が必要だろうと考えていた。
 それを現状の著者の体力が許すのか? 時間との勝負という気持を非常に強くもっていた。しかし、著者は刻々と進む病状の中で、それを見事にやりとげた。著者を少しでも知る者としては、「さすがだな……」という感想をもった。
 もうひとつ懸念したのは、医療専門用語や多くの抗がん剤の名称や解説が数多く出てきて、それを著者自身が説明していることだ。同ブログの単行本化の売り込みを若干手伝った者としては、いくつかの出版社の反応が、「医療者でもない人が、専門的な用語を使っても……」、とか「これは難しすぎる……」というようなものだったので、心配した面もある。(ちなみに、この本の出版は、彼女自身が北海道新聞社にもちかけたもので、私は一切関係していない)。
 しかし、本書はそのこと自体が良い意味で特徴となっている。患者自身が自分の病気を良く勉強し、医師とコミュニケーションをとっていく大切さを考えさせてくれる。著者は医療者と共に戦っていく患者だった。冒頭部での告知までの怒り、不安感、告知された後の動揺から、彼女自身が「治らない病気とつきあう」という決意のもとに、自分の病気や抗がん剤の知識を高め、医療者とともに進んでいく姿は、知的好奇心をも感じさせ、いわゆる「患者学」とはこういうことなのだろうと思わせる。
 深読みすればだが、本書では多く触れられていないが、乳がん検診の啓発活動であるピンクリボンフェスティバル、日本対がん協会の主催するリレー・フォー・ライフ、そして、がんを含めた多くの患者さんの命を左右する「ドラッグ・ラグ」の問題など触れたかったことがまだまだあったに違いない。
 昨年10月に医療ライターの真ノ宮ゆな氏が彼女を取材する際、私は同席させてもらったのだが、取材の途中で疲れて病院のベッドに横になっていた彼女が、リレー・フォー・ライフやドラッグ・ラグの話をふると、途端にベッドから上体を起こし熱く語りはじめたのが強く印象に残っている。
 本書を読んで強く感じるのは、病気に支配される日常ではなく、日常生活の中で病気と付き合っていくという覚悟だと思う。それを見事にやりとげた著者の姿勢が本書から伝わってくる。