NISSAN GT-R 2017モデル試乗

昨年の11月のことになるが、ノートe-POWERの試乗会があった当日、その足で横浜の日産本社で「NISSAN GT-R 2017モデル」を借り出した。もっとも私名義で借りたのではなく、大先輩である正岡貞雄さんが借りるのをこれ幸いと、相乗りしてしまおうという魂胆。まあ正岡さんのお抱え運転手? のような感もあるが、私としてもその立場はまんざらでもないところ。

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横浜にある日産グローバル本社の駐車場でGT-Rを待つ。広報車の受け渡し場所の前に、野太いエキゾーストノートを低くうならせて、それはやってきた。ボディは新色の「アルティメイトシャイニーオレンジ」だ。

広報部員の目があるというのは少なからず緊張する。シートベルトをし、手慣れた風を装ってシート位置、ステアリング位置を合わせる。クルマによってはここで操作方法がわからなくて時間を取ってしまうことがあるのだが、GT-Rに関しては、私のような(最新のクルマに縁遠かった)人間にとっても優しい。これだけでもかなり高得点となる。

セレクターレバーをAモードに入れ、アクセルを踏んで動かすまでの緊張感は続くが、動き出してしまえば、クルマはクルマだ。日産本社から第一京浜に出て、首都高横羽線の東神奈川から都内へと向かう。今回の試乗ルートをざっくりと言うと、日産本社から都内の正岡邸へ、というのが当日。さらに日を改めて都内から栃木県のツインリンクもてぎを往復するというコースをとる。これはRJCカーオブザイヤーのテストデイ(最終選考会)のための移動だ。もてぎ往復では主に私がドライビングを担当し、その後は正岡さんが自身のメニューをこなし日産に返却するというもの。

とりあえず首都高で比較的深くアクセルを踏み込むチャンスを待つ。クルマを一台走らせるのに570頭分の馬を使うこのクルマ(3.8L・V6ツインターボ、570ps/6800rpm、637Nm/3300-5800rpm)は、特に戦闘的な気持ちになるわけでもなく、右足に力を入れただけで弾丸のように突き進もうとする。ターボラグなんて感じている暇がないという感じだ。

ギヤポジションはAのまま。6速デュアルクラッチトランスミッションは、パドルシフトをもってしても、全開加速では上手いタイミングでシフトアップするのは難しそうな感じ。ただ、折悪しく(あるいは良くかもしれないが……)アクセルを踏める区間はすぐに終わり、けっこうな渋滞に巻き込まれてしまった。

このGT-Rはアイドリンクストップ機構を持たない。V6ツインターボエンジンのラジエターは走行風に当たることなく、どれほどの熱を発生しているのだろうか? などという疑問とともに水温計に目をやる。ほぼ真ん中を指している針は、渋滞中に折に触れチェックしても、若干上側に触れる程度だった。現代のエンジンだから当たり前と言えば当たり前なのだが。ちなみに燃費計は渋滞では、6.0km/Lあたりから5.8km/L当たりまで下がってきた。

横羽線から湾岸線経由で中央環状線に入って幾分クルマが流れるようになって、ようやくサスペンションの感触を確かめることができた。乗り心地に関しては「スポーツカー」というのとは明確に違う。しなやかな……などというありきたりな表現もできる。まあ、常に十分なストロークでサスペンションが動いている感じとでも言ったらちょっとは具体的だろうか? ただ、想像の域でしかないが、かつてのGT-R(どの型でもいい)でサーキットを攻めた経験のあるドライバーならば「こんなのはGT-Rではない」と思うのではないだろうか。だいたい、R34GT-Rのときでさえ「足が硬い」というのはインプレッションの常套句だったと記憶している。

 日を改めてツインリンクもてぎに向かう。ここでは高速ツアラーとしての実力をまざまざと見せつけられた。スポーツカーとして持っていてもおかしくない「硬い足」とか「騒音」、あるいは「緊張」とは無縁だ。逆に「GT-Rがほんとこれでいいの?」という感じ。非常に快適で、長距離移動がこれほど楽なクルマもそうはないと思う。ただし、いったんアクセルの上の右足に力を込めれば、暴力的ともいえる加速感が背中を押す。追い越し車線を常識的なスピードで走っていても、かなり早い段階で前のクルマは前を開けてくれる。そういう意味でも走りやすい。100km/h時のエンジン回転は6速で2400rpmほどだから割と高い。クルージングではこの上にもう1速あっても全然不思議ではない感じだった。

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ちょっと話がそれるが、私が子どものころ父がいわゆる「箱スカ」のGTに乗っていた。おそらく新目白通りあたりだと思うのだが、普段は安全運転の父が、クルマに興味を持ち始めた私が助手席にいることもあり、空いた直線でフル加速したことがあった。もちろん大した加速力ではないのだろうが、まだ体重が少なかったこともあるのだろう、シートバックに背中が押し付けられ、お尻が浮くような感覚にドキドキワクワクしたことがある。もちろん、体重もそのころよりはあるし、GT-Rのシートはホールド性に優れているから、今回はそんな現象は起きないが、(モノはまったく別にしても)スカイラインの系譜を継ぐクルマに乗っていることからそんなことを思い出してしまった。

話がそれたついでに子どもといえば、ツインリンクもてぎ近くの一般道を走っていると、小学生くらいの子どもたちがこちらを指さし「GT-Rだ、GT-Rだ」と言っているのも見た。イマドキの子どもはクルマに全然興味がない……くらいの先入観を持っているこちら側が驚いた。しかもGT-Rという車名で呼ぶとは。クルマ社会の将来を考えてもGT-Rは必要なのだ。

GT-Rの真骨頂はワインディングロード、できればサーキットでこそ体験できるのだろうが、今回の試乗ではあまりそれに触れることができなかった。幾分それに近い走りができたのは、ツインリンクもてぎ周辺のいくつかのコーナーということになる。しっかりと剛性感のあるブレーキフィールを感じながらスピードをコントロールし、ステアリングを切り込む。特段シャープというわけではないが、レールの上をトレースするようにコーナリングする。コーナーが続いても重量級のボディとは気づかせないように適度なロールスピード、控え目なロールアングルでこなしていく。それは何段か高いレベルとなってもそれは破たんしないのだろう。

パドルシフトはステアリングコラムに固定式になった。ステアリングとともに回転してしまうと、タイトターンになったときにアップとダウンが入れ替わり迷うことがあることを考えるとこちらの方が合理的。ただ、レース専用のフォーミュラカーならともかく、箱車にパドルシフトというのはどうなのか? という思いはある。ここまで精緻にコンピューター制御でシフトするのであれば、いっそのことマニュアルモードを無しにして、ステアリング、アクセル、ブレーキに集中してしまう方がすっきりしているのではないだろうか? 本気で走ったら、そうしないと危ないよ、ホント。

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