クラッチプレートの摩擦を、プレッシャーリングが受けたトルクで発生するのが多板(クラッチ)式LSDだが、プレッシャーリングの仕様によって効かせかたが違ってくる。2ウェイ、1.5ウェイ、1ウェイと呼ばれたりするが、要はアクセルオン/オフで、どう差動制限されるか? ということだ。
2ウェイというのは、アクセルオンとオフの両側でプレッシャーリングが開くので、加速のトルクでも減速のトルクでもLSDが効く。アクセルオンで効くのは駆動力をかけるためだとわかるが、オフ側で効かせるメリットはなにかというと、減速時の姿勢を安定させることなどがある。
また、もっと積極的にオフ側の差動制限を使うならば、リヤ駆動車の場合は、アクセルオフでリヤを振り出すようなこともしやすくなる。コーナリング中に左右のドライブシャフトが直結に近くなるとイメージすればなんとなく分かるのではないかと思う。もちろん、イニシャルトルクが弱い場合にはこの効果は薄れる。
前輪駆動車の場合はこれをやると、大アンダーステアになることがあるので注意が必要だ。かつてダートトライアルに出場したとき、なんとなくブレーキング無しでいけるような気がするコーナーがあった。「まあ、FFだからタックインを使ってクリアしてみよう」と深い考えなしにコーナーに入ってアクセルオフをした瞬間に強力なアンダーステアでコースアウトしたことがある。自分のクルマに2ウェイのLSDが入っていたことをすっかり忘れていたのだ。アクセルオフでタックインなどするわけもない……。
プレッシャーリングによる効かせ方に戻ると、1.5ウェイは、アクセルオンに対してオフの効きを弱く設定してある。これも2ウェイと考え方は基本的には同じ。1ウェイは私のようなうっかり者にも使いやすく? アクセルオフではプレッシャーリングが開かない。前輪駆動用のタイプとも言えるだろう。ただし、イニシャルトルクがかけてあれば、その分LSDは効いていることになるので、ノーマルデフよりは回答性は悪くなる。それでもアクセルオンの時のトラクション強さのメリットは大きい。