自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

スポーツカーの定番がMRなのにRRも作り続けるポルシェ

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スポーツカーはMR、百歩譲って?FRというイメージだが、かたくなにRRを採用し続けているメーカーにポルシェがある。1940年代末にRRのスポーツカー、356を発売して以来RRを売りものにしてきたと言って良いだろう。もっとも、356のプロトタイプはスポーツカーの定番であるMRを採用していたが、実用性を考えたうえで狭くてもリアに乗車スペースを作れるRRとしたというのが本当のところのようだ。

RRは、エンジンの直前にリアタイヤがくる。ここがメリットでありデメリットでもある。パワーのあるクルマでは急加速したときにはホイールスピンを起こすが、リアが重いためにそれが起こりづらく、無駄の無い加速を可能なのはメリットだ。

一方で、フロントが軽いということは、ドライバーにテクニックを要求するということでもある。コーナリングの進入でハンドルを良く効くようにするには、フロントに荷重を載せることが必要だ。通常はブレーキングを上手に行えばフロントに荷重は移る。ただし、ポルシェのようなRRの場合、ブレーキング時にはフロント荷重になっていたとしても、ブレーキを離した瞬間にリアに荷重が映ってしまうので、そのタイミングとコントロールが難しくなる。さらに上手くコーナリングに持ち込めたとしても、遠心力によって重いリアが振り出すとコントロールが難しい。これはデメリットと言える。

ポルシェはこういう弱点があることを十分理解した上でシャシーを改善してファンの信頼を勝ち得ていたともいえる。「ポルシェ使い」という言葉があるように、速く走らせるためにはドライビングテクニックが必要という要素でマニア心をくすぐるという上手い戦略があるように個人的には思う。

ちなみにポルシェでもフラッグシップの911はRRだが、ケイマンやボクスターなどMRのモデルもラインナップしているし、純レーシングカーは、昔からMRを採用している。

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実は日本にも2012年までRRに徹したクルマがあった。それはスバルサンバーだ。デビューした1961年から一貫してRRと4輪独立サスペンションという基本コンセプトを守り「農道のポルシェ」という愛称で今でも根強い人気がある。