自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

ボディ剛性を上げるにも、メリットとデメリットがある。

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クルマはシャシーが大事だ。モノコックボディを使用する現代ではボディもほぼ同じ意味を持つと言っていいだろう。「ボディ剛性を上げる」のはモータースポーツでもよく行われるチューニングだ。ごく簡単なものとしては、サスペンションの左右のストラットアッパーをつなげるストラットタワーバーの装着もその一例だ。

一見頑丈そうなボディでも走行中に若干でもたわんでしまうことがある。ここでストラットの上部が動いてしまうと、サスペンションの性能を十分に発揮できない。そこでサスペンション、およびボディのストラットハウス上部をバーでつなげることで剛性をアップしようというわけだ。

上部をつなげると今度は下部が気になる。そこで左右のロワアームの付け根をつなぐロワアームバーもアフターパーツなどで設定されていることがある。この辺のチューニングは手軽さもあって人気がある。

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室内にジャングルジムのようにロールケージを張り巡らせるのも、安全性の確保が第一義だが、これもボディ剛性を挙げる意味合いもある。例えば6点式ロールケージと言われるものは、車室内の左右のフロント、センター、リヤをつなぎ、さらにそれぞれを縦方向につないでいるので、ボディ剛性アップという意味も大きくなる。

6点式はモータースポーツで考えると最低限の装備でもあり、他にもリヤ部分の左右のロールバーをX状につなげたり、ダッシュボード内を左右につなげたり、ドライバーのサイドを保護するようにフロントとセンターをつないだりすれば、剛性も高くなる。さらにAピラーとそれに沿うロールバーを溶接するなどの手法もある。この辺は車両規則にもよるところだ。

これらは良いことばかりでもない。まず重量の問題がある。ロールケージは安全性が第一なので、重くなってもドライバーが守れればいいという考え方はあるが、やはり重たいということはクルマにとっては負担となる。

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もう一つはクラッシュした場合だ。ストラットタワーバーなどもそうだが、左右がつながっているということは、片側がぶつかっただけなのに、もう片側にもダメージが及ぶことがある。軽いクラッシュだったのに、結果大ダメージ、もしくは全損などということもありうるので、財布の中身が気になる?走る側にとっても悩みどころだ。