自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(40)MT(マニュアルトランスミッション)の構造と特徴

出典:「きちんと知りたい!自動車メンテとチューニングの実用知識(日刊工業新聞社)」

MTは手動によるギヤチェンジができます。AT(オートマチックトランスミッション)に比べてシンプルで軽量です。かつてはコストも安いために広く使われていましたが、現在は少数派になってしまいました。

それでも、習熟度にもよりますが必要なときに素早く自分がベストと思えるギヤにチェンジできるためにスポーツドライビングなどでは好まれます。

この構造を簡単に説明すると、前進6速ギアの場合には、ギヤボックス内部で1速から6速までのギヤがすでに噛み合った状態になっています。つまりギヤチェンジするといっても、実際には組み合わされたギヤのどれかを選ぶという構造になっています。

この構造を「常時噛合意識」と呼びます。かつてはギヤ自体が動くものもあり「選択摺動式」と呼ばれましたが、現在では見られません。

ではシフトレバーを動かすとなにが動くのかということになりますが、これはスリーブが動きます。自分が選択したいシフトポジションにシフトレバーを動かすと、スリーブがエンジンで回転するシャフトとあらかじめ組み合わされたギヤを固定することにより、トランスミッションからタイヤ側に出力されるという形になります。

もうちょっと詳しく書けば、シフトレバーの横方向の動きがスリーブにつながったシフトフォークの選択で、縦方向のスリーブによるギアの選択ということになります。

出典:「きちんと知りたい!自動車メンテとチューニングの実用知識(日刊工業新聞社)」

ちなみにMTのギヤチェンジの場合には、クラッチを切りますが、これは一端エンジンからの動力を切り離してやることによって、スリーブに余計な負担をかけることなくシフトチェンジできるようにするのが目的です。

また、スリーブの回転を同期させる(タイミングをあわせる)ための装置としてシンクロメッシュを用いることによって、よりスムーズなシフトチェンジが可能となっています。

これはスリーブ側の歯と変速ギヤ側の歯が噛み合う前に摩擦で回転、同期させることによって楽に噛み合うようにする機構です。