自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

父の日には早いですが、父のハイラックス

実家が自動車鈑金塗装業をやっていたおかげで、子供の頃からわりといろいろなクルマに触れることができた。私の好み…というか子供の多くはそうだろうが、強く記憶に残っているのはスポーツカーやスポーティカーだ。だが、実際に父が仕事に使っていたのはバンやトラックの方が多かった。私がちょうど免許証を取っていたときに、家にあったクルマはトヨタ・ハイラックストラックで、当然自分のクルマなどない私が若葉マークを付けて運転していたのがこれになる。

 

車種としては3代目ハイラックスだが、このクルマは父としては異例に長く乗っていた。というのは、私が中学2年?のときにフロント3座のこのクルマに、父の運転で私の友人と3人で乗った記憶があるからだ。このときは中学の技術の授業で、エンジンの構造のテストがあるので、たまたまうちの工場にあった要らないバイクのエンジンを友人と分解しようという算段になっていた。エンジン分解がテストに役立ったどうかは微妙だが、その友人とほぼほぼ同じ点数だったと記憶している。

 

それはそれとして、私が免許証を取るのが18歳のときなので、父は少なくとも4、5年は乗っていたことになる。よっぽど気に入っていたか買い替えるお金がなかったかのどちらかだと思う。後者の可能性の方がかなり高いが…。

私の教習所の教習車はマツダカペラだ。さすがにフロア5速MTだったが、ハイラックスはコラム4速MTだった。もちろん、父の操作するのはさんざ見ていたので、操作自体に戸惑うことはなかったが、あまり面白いとも思わなかった。それにまだ運転に慣れるのに精一杯で、操作自体をどうこうという余裕もなかった。

 

当時はハイラックスのスペックなどまったく興味がなかったが、こうしてカタログを見たり、リリースを確認したりすると、けっこう興味深い。搭載されているエンジンは12R-J型1.6L直列4気筒OHVで最高出力は80ps/5200rpm、最大トルク12.5kgm/3000rpm。当時だかかグロス表示になるので非力といえば非力。12Rという意味では同時代のコロナなどにも搭載されていたようだ。

 

車両重量は1055kgだから当時としても軽量でもない。まあかなりゴツいラダーフレームを使っているので仕方ないところ。フロントサスはトーションバーのダブルウイッシュボーン。まあジオメトリーどうこうより頑丈さからの選択だったのだろう。どこか昭和30年代のクルマの匂いも残っている。

 

ギヤ比を見ると1速が4.862で2速が2.991と、ファイナルレシオが4.875だから、超ローギヤードな上に1、2速が離れている。1速はエクストラロー的で、まさしく荷物を積んで走る働くクルマらしい設定になっているし、父が2速発進を常用していたのを思い出して、勝手に納得したりしている。事実上のコラム3速MTとも言える。

このクルマに関しては、ドライブしてどうこうという思い出がほとんどない。免許取り立てで母を横に運転し、冷や汗をかいたりうるさく指図したりするので(今になって気持ちは分からなくもないが)、もう横にのせたくないなと思ったことだけは鮮明に覚えている。

 

仮に今あったらかなり大事にしてしまいそうな感じはするクルマではある。