自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(30)潤滑系・エンジンオイルの役割

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

エンジンは金属でできていて、それが内部で可動する装置ですから、金属同士が摩擦する部分がとても多くなっています。

主なところでもピストンリングとシリンダー壁、クランクシャフトのジャーナル部やコンロッドとつながるビッグエンド、ピストンとコンロッドがつながるピストンピン、カムシャフトや吸排気バルブなどがあります。

もちろんこれらの部分では常に摩擦が発生していますので、直接的に接触していればすぐに摩耗してしまいます。そこでエンジンオイルが油膜を作り潤滑の役割を担い、摩耗を低減する必要があります。

エンジンオイルにはシーリング(気密)の役割もあります。シリンダーとピストンリングの間をオイルで塞ぐことによって、燃焼ガスがクランク室に漏れないようにしています。高温の燃焼ガスがクランク室に漏れると膨張力をロスしてしまうためオイルの粘性を利用して塞ぐ感じです。

冷却の役割も見逃せません。メインとなるのは水冷式エンジンの場合には冷却水ですが、オイルもある程度エンジン内部の冷却の役割を担います。とくにシリンダーヘッドとピストンクラウンは、高温となった燃焼ガスにさらされるためにオイルによる冷却が必要です。

意外と見逃されているのがエンジンオイルには緩衝という役割があることです。燃焼行程での燃焼圧力は数トンにもなることがありますが、それがピストン→コンロッド→クランクシャフトと伝わるため、大きな衝撃が発生しています。これなの接触部分の間にオイルがあることで、燃焼圧力がやわらげられて伝わり、エンジンがスムーズに動くとともに耐久性も担保されます。

さらにオイルには、エンジン内部の洗浄や防錆という役割もあります。