今は少なくなりましたが、かつてリアサスペンションに用いられてきた代表的なサスペンション形式がトレーリングアーム式です。リジッドアクスルのトーションビーム式もトレーリングアームの一種ですが、ここでは独立懸架式だけを説明します。この方式は、ボディ、もしくはメンバーを介して後ろに向けてアームが伸びタイヤにつながっています。
トレーリングアーム式はキャンバー変化の少なさと乗り心地の良さが特徴
トレーリングアーム式には、フルトレーリングアーム式とセミトレーリングアーム式があります。前者はアームピボットが車体中心線に対して直角になっています。この場合、サスペンションが動いても、キャンバーやトレッド変化がありません。この点でリジッド式と同じです。ただ左右のアームは連動していないために乗り心地は良い傾向となります。また突起を乗り越えたときにタイヤが後退するように動くので、衝撃を吸収するという特徴もあります。
そのような特性からFF車のリアサスペンションとして多く用いられてきましたが、あまり独立懸架としての有効性がないためにトーションビーム式リジッドの置き換えられています。
ちなみに、フルトレーリングアーム式をフロントサスペンションにこの方式を使った例もありますが、キャスター変化が大きく、直進安定性に影響が出ることや、ブレーキング時のノーズダイブが大きいというデメリットがあるために使われてきませんでした。
セミトレーリングアーム式はかつてのFR車の代表的なサス形式
セミトレーリングアーム式は、アームピボットが車体中心線に対して斜めになっているサスペンション形式です。フルトレーリングアーム式ではホイールベースの変化も大きくなりますが、角度を付けたことでトー変化、キャンバー変化があるものの、ホイールベースの変化が少なくなり、使いやすくなります。
乗り心地が良いために、かつてはFRの高級車やスポーティ車のリアサスによく使われており、ハコスカと呼ばれたスカイラインGT-Rや80年代くらいまではBMWがこの形式を用いて高い評価を得ていました。