自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。

MTの構造と特徴・自動車のメンテナンスとチューニング(14)

出典:「きちんと知りたい!自動車メンテとチューニングの実用知識(日刊工業新聞社)」

MTはトランスミッション内のスリーブをシフトレバーで動かして変速する

MT は、 必要なときに素早く 、 自分がベストと思える ギヤにチェンジできるため、スポーツドライビングなどでは好まれます。

構造を簡単に説明すると、 前進6速ギヤなどの場合には、 トランスミッション内部で1速から6速までのギヤがすでに組み合わされた状態にされています。

つまり「ギヤチェンジする」 といっても、実際には組み合わされたギヤのどれか を選ぶという構造になっているということです。こうした構造を「常時噛み合い式」と呼びます。かつてはギヤ自体が動くものがあり「選択摺動式」と呼ばれましたが、 現在では見られません。

ではシフトレバーを動かすと何が動くのか?ということになりますが、これはスリーブ(ハブスリーブ) が動きます。自分が選択したいシフトポジションにシフトレバーを動かすと、スリーブがシャフトとあらかじめ組み合わされたギヤを固定することにより、エンジンからの入力がトランスミッションから出力されるという 形になります 。

シンクロメッシュによる回転の同期がスムーズなギヤチェンジに必要

出典:「きちんと知りたい!自動車メンテとチューニングの実用知識(日刊工業新聞社)」

ちなみにスポーツカーなどでは「クロスレシオ (close-ratio) トランスミッション」 が採用されていることもあります。

これは、各ギヤのギヤ比を近くしているものです。 ギヤ比が離れていると、シフ トアップしたときにエンジン回転が大きく落ち込みトルクバンド (もっとも効率良 くトルクを出せる回転域) から外れてしまうことがあります。 それを防ぐためにギ ヤ比を近づけ、回転の落ち込みを少なくするという意図があります。

ギヤチェンジの際にクラッチを切りますが、一旦エンジンからの動力を切り離し てやることによって、 トランスミッション内部のスリーブに余計な負担をかけるこ となくシフトチェンジできるようにするためです。

また、スリーブの回転を同期させる (タイミングを合わせる)ための装置として シンクロメッシュを用いることによって、よりスムーズなシフトチェンジが可能と なるような配慮もされています 。これは、いきなりスリーブを噛み合わせるのではなく、摩擦などで回転差を少なくしながら(同期)、噛み合わせるための装置です。