前回から続きます。
「油圧式クラッチの仕組み」
クラッチが滑る場合には、走行距離などの目安があるものの、ある程度不可抗力の面がありますが、クラッチマスターシリンダーやレリーズシリンダーの不具合については注意していれば事前に気づけることもあります。
クラッチフルードが漏れるとクラッチが切れなくなる
現在、マニュアルトランスミッションの作動系統は油圧(正確には液圧)によるものが多くなっています。クラッチを踏み込むとマスターシリンダーによってクラッチフルードがパイピング内を移動し、レリーズシリンダーがレリーズベアリングを動かし、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングによって、クラッチディスクがフライホイールより切り離されるという方式です(上図参照)。
ワイヤー式の場合は、クラッチディスクが減ってくるとワイヤー調整が必要になりましたが、油圧式となったおかげでそれが不要になり、クラッチの踏力も軽くなりましたから、メリットです。
ただしクラッチフルードという液体を媒介とするために、今度は漏れというトラブルが起きる場合があります。クラッチペダルとつながるマスターシリンダーのシーリング部分やマスターシリンダーによって動かされ、レリーズベアリングを動かすレリーズシリンダーが漏れの発生する部分となります(下図参照)。
ボンネットを開けたときにクラッチフルードのリザーブタンクをチェック
「クラッチフルード漏れのサイン」
それで最終的にはクラッチが切れなくなったり、クラッチに近いマスターシリンダーからの漏れの場合には、クルマの底面や車内の足元がクラッチフルードで湿って気がつくことになります。こうしたトラブルはボンネットを開けたときに、クラッチフルードが入っているリザーブタンク内の液量をチェックしておけば早期に発見できる場合もあります。
これはブレーキフルードのリザーブタンクに似たもので、ブレーキの場合はパッドの減りとともに液面が下がりますが、クラッチの場合はフェーシングが減っても液面は下がりません。つまり漏れの可能性が高いということです。
「フルード交換のタイミング」
また、クラッチフルードもブレーキフルードほどではないにしろ水分を吸って劣化します。その場合には、フルード交換(エア抜き)が必要になります。
この記事の元になっている本(自著)です。ご愛顧をm(_ _)m