コイルスプリングは、単に取り付けるだけでなく、操縦性を上げるための工夫が盛り込まれることがあります。代表的なのがストラット式サスペンションのストラットへの取り付けです。それはスプリングオフセットと呼ばれます。
アッパーアームがないストラットは横からの力に弱い
ストラット式サスペンションは、ショックアブソーバーを内蔵したストラット自体がアームの役目を持ち、アッパーアームがないためにシンプルでコストが低いのがメリットです。
ただし、アッパーアームがないために、可動部であるピストンロッドに横力がかかり、サスペンションのスムーズな動きを妨げる場合があります。直進時でもストラットには曲げモーメントが作用しピストンロッドを曲げようという力が働きます。高いスピードでコーナリングする際には、当然、大きな横力がかかりショックアブソーバーの動きが渋くなってしまうのはデメリットになります。
スプリングオフセットをとることでストラットへの横力を弱める
そこでストラットへの横力に対応する方法の一つがスプリングオフセットを設けることです。コイルスプリングを角度を外側にずらすことにより、ストラットに伝わる横力を弱めることができるのです。
この方法は最初にBMWが採用しました。国産メーカーでは三菱自動車が、スプリングをそのまま外側に平行移動することにより同じ効果を実現しました。現在では、メーカーを問わずストラット式のフロントサスペンションには、スプリングオフセットが設けられています。
ちなみにダブルウィシュボーン式やマルチリンク式であれば、アッパーアームがあるので、横力はロワアームとの組み合わせで抑えられるところが大きなメリットになっているわけです。この辺が高級車やスポーツカーに用いられる一因です。