自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

プレイドライブ創刊編集長に聞く

 ひとつの仕事の山を超えて、懸案の単行本の原稿に落ち着いてとりかかれる状態になってきた。今日は単行本の取材をしてきた中でのこぼれ話、『プレイドライブ』の巻だ。同誌は、モータスポーツに参加する人を対象とした雑誌だ。どちらかというと土系(ラリー、ダートトライアル)のイメージが強いと思う。その前身となる『ドライブ旅行』の創刊は1968年までさかのぼる。

 今回、前々編集長や前編集長のツテで、幸いにも創刊編集長の宝崎氏にお会いする機会を得た。ちなみに宝崎氏の現在の愛車はマツダ・ロードスター。「せっかくだから、なるべくオープンにして乗ります」と言い、思い立ったらお気に入りの美術館に行くため“だけ”に岡山まで一気に走ってしまう、“ドライブ旅行”を現在でも実行しているような感じの人だ。

 いろいろな話を聞けたのだが、まず創刊時の誌名からもわかるように、最初は、モータースポーツ雑誌という意識は全くなかった。モータリゼーションが拡大する中、「何か面白いものをやりたいな」という思いで始めたそうだ。当初は海潮社という出版社から発行していたが、これも『ドライブ旅行』を発行するために作った会社。そして、クルマを使って美味しいものを食べに行ったり、温泉に行ったり、スキーにいったりというクルマによるレジャーを中心にした誌面作りが始まった。

 ラリーと出会ったのが69年の第1回DCCSウインターラリー。「取材に行っても、初めてだから右も左も分からない。ただ、とにかくコマ地図に興味を持った。そして、コマ地図を使ってドライブしたら面白いのではと閃いたんですよ」と宝崎氏。コマ地図は、普通の地図と違って、俯瞰的に見ることができない。その場に行ってみないと、どういう場所なのかがわからない。コマ地図の先には思いもかけない景色が広がっていたりする楽しみがある。そんなところに魅力を感じたそうだ。ただ「ラリー競技の面白さのほうは全然わからなかった」と言う……。

 さっそく宝崎氏は雑誌作りにそれを生かしていくことになる。最初は編集部でコマ地図を使ってドライブコースを作り誌面展開していたが、ノウハウなしにコマ地図を作るのは難しい。容易に想像できることだが、間違ったコマ図を誌面に掲載してしまった。これがラリー関係者の目に止まる。編集部に当時のトップナビゲーターから連絡があり、「素人がコマ地図を作るなんて危険極まりない。私に作らせなさい」というような成り行きとなった。それをきっかけに同誌はラリー色が段々強くなっていく。

 宝崎氏が編集長をしていた70年代半ばまでは、モータースポーツ誌として作っていたわけではなく、試行錯誤を続けていた状態だったそうだ。「コマ地図間違いの一件がなかったら、全く違った雑誌……純粋にコマ地図を使ったドライブを楽しむ方向に行っていたかもしれません」。そう語るのを聞きながら、もしかしたら、そっちの方向を望んでいたのかな? と私は思った。ちなみに取材時、宝崎氏は一冊の自動車雑誌を手にしていた。「最近はほとんど買わないんですが、表紙にあった“旅”という文字にひかれたんですよ」と、それくらい旅にこだわりを持っているようなのだ。

 もちろん、それはそれとして『プレイドライブ』がモータースポーツの下支えをしてきたのは事実。ただ、モータースポーツ専門誌としての『プレイドライブ』は、意図されたものではなくて、コマ地図に興味を持ったことと、その後のミスという偶然から派生したものだったというのも雑誌作りの面白みだと思う。

単行本の取材を続けています

 ということで(この間、5ヵ月ですが……)、株式会社グランプリ出版から新刊を出すためにいろいろな自動車雑誌の編集部を訪問している。単行本は、一番最近のものでも2009年なので、ずいぶんと間が空いてしまった。ちなみに、これが出れば6冊目の自著になる。最低でも一年一冊くらいは出したいと考えているが、こういう時代なので、なかなか思うようには行かない……。

 正式な本のタイトルはまだ決まっていないが、「自動車雑誌の歴史(仮題)」というような、ずいぶんと大上段に構えた企画書を持って歩いている。私も楽しいことやつらいことを経験しながら、多くの自動車雑誌に携わってきた。一読者だった雑誌、執筆させてもらったことがある雑誌、あまり縁のなかった雑誌などを含め約30誌をピックアップした。

 そこで各誌の元・現役を含めた編集長、関係者を中心にインタビューして、創刊当時の話や、良かった時代、悪かった時代?、現在の話を含めて一冊にまとめてみよう。しかも、日本のモータリゼーションとどのようにリンクしているのか考察してみようという、自分の力を勘違いしたような企て? に、“日暮れて道遠し”の悲哀を味わっているところ。

いずれにしても、今までの同社の単行本の切り口とは違ったものになるのではないかと勝手に思っている。詳しい内容は、このブログでもおいおい明かして(そんな大げさなものではありませんが……)いくつもりなのので、よろしくお願いします!

国立国会図書館で

 調べものをするために、国会図書館に行ってきた。ゴールデンウイークの間だから、そんなに混んでいないだろうと読んでいたのだが、普段にくらべてかなり人口密度が高い感じで、ちょっと疲れた。70年代あたりの自動車雑誌は、現代とくらべれば野蛮なところがあるが、そういう面も含めて面白い。自動車雑誌=自動車レース雑誌のような感もあると再認識した。

神田神保町で

 神田神保町に行って、単行本の参考になりそうな本を探す。菅村書店で『スピードライフ』1954年3月号を買った。硬軟取り混ぜた内容になっていて、なかなか面白い。その中に、陸王の広告を見つけて「そういえば、うちの親父も陸王に乗っていたな」と思い、「乗ってたのこれ?」と聞くと「俺は750だ」と言われた。あと、「陸王だけじゃなくて、ハーレーも持っていた」と念押しされた……。

 ちなみに、親父は自動車板金塗装業をしていて、城北ライダース(知らないかな?)と親交があったらしく、ヘルメットのカラーリングをしていたという(本人談)。「はじめは数個だったのが、しまいには20個くらい塗装することになって大変だった」とも言っていた。古きよき思い出なんだろう。

北沢氏の講演

 ジャーナリストの北沢栄氏の講演会に行く。先日、急に電話がかかってきて、何事だろうとちょっとひるんだのだが、「4月6日の夕方、空いているなら来なさい」(こんな脅迫的なもの言いではなかったが……)という連絡だった。ということで、一も二もなく参加した。

 テーマは「社会保障と消費税のあるべき本当の姿」(レジュメ:PDF)。政治や行政に裏切られ続けて、あきらめムードが漂うなかで、北沢氏が精力的に調査しつづけ、改革案を出す姿勢に感銘を受けた。あきらめてはだめだ。

グランプリ出版へ

 あらかじめグランプリ出版のK編集長に提出してあった企画の説明をするために、グランプリ出版にお邪魔する。こういう機会は久しぶりだったので、大変緊張してしまった。K編集長は、大変丁寧に対応してくれて、企画を修正したのち編集会議にかけてくれるとのこと。ありがとうございます。

アルファへ

午後からI氏のクルマに同乗させてもらい、すごく久しぶりでアルファにお邪魔する。中村社長からフェイスブック経由で「遊びに来れば」というお誘いを受けて、それを真に受けた形だ。中村社長には、拙著「必勝!ジムカーナセッティング」書くときに大変お世話になっている。

プレイドライブが休刊した直後ということもあり、話題の中心はどうしてもそっち方向に行ってしまう。ただ、中村社長は相変わらず? 精力的な感じでBRZの納車を楽しみにしているようだった。モータースポーツやってる人はいくつになっても若い!

ちなみに、モータースポーツ歴50年になろうかというI氏は、レース参戦のためにレーシンググローブを買っていた!