自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車雑誌、悪戦苦闘の100年史(20)

10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーション自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその20回目です。

国産車を中心に筑波サーキットでのタイム比較という基準を作り、自動車雑誌のスタンダードの地位を築いた「CARトップ」。基本的スタンスは創刊時と変わることがない。

2000年代に入っても「CARトップ」は、一般的なクルマ好きに対して、クルマの情報と楽しさを伝えようという主旨で作っていました。それは創刊時から変わらないスタンスです。ただ、押し寄せるクラスマガジンの流れもあり、自動車総合誌が成り立ちにくくなってきたことは同誌も同じ。インターネットで無料で手に入る情報も多くなっていました。2013年当時「CARトップ」の編集長を務めていた名取則隆氏は、難しい舵取りを任される中でこう語っていました。

「クルマ好きにはスポーツカー系の記事がウケます。でも、実際に市場でスポーツカーは売れていません。今後もスポーツカーはそんなにたくさんは出てこないと予想される現状で、どうやって読者の興味をひきつづけるかに苦労しているところです。自動車雑誌を読む層が高齢化していることもあります。編集部の多くが30代ですが、それで40代、50代の読者に面白いと思ってもらう記事を一冊に凝縮させるのは難しい面もあります」

           

「CARトップ」はラリードライバーからモータージャーナリストとなった清水和夫氏をいち早く起用。清水氏がタイムアタックや公正な車種比較をすることでも信頼を得てきた。

同誌も以前は読者の年齢層が40代、30代、50代の構成だったのが、現在は40代、50代、30代という構成になってきているという。

「本誌は昔からの流れもあって、かつてほど読者ウケはしないとしても、ツクバアタックは続けようとか、他の雑誌より1台でも多くインプレッショんを載せたり、燃費テストをやったりと、基本的に走らせた事実をベースに記事を書こうとは考えています。実際に乗ってどうかというのをより伝えていこうという方針はあります」と名取氏は語ってくれました。

クラスマガジンにしてしまえば、読者がある程度想定できるので記事も作りやすいのでしょうが、総合誌はそれが難しい。そんな中での決意が感じられました。

●カートップ創刊時の記事はこちら

yoiijima.hatenablog.com

           

「ホリデーオート」は変化球?勝負からスタンダードな記事や辛口の記事を柱にしている印象となった。

もう一つの代表的な総合誌として「ホリデーオート」を見てみます。同誌はこれまでも触れたように「Oh!My街道レーサー」や「ハイソカー」などで常に話題を提供してきました。ただ、2013年現在は、保守的、あるいは昔ながらの「クルマ好き」をターゲットとしたスタンダードなスタイルになったように見えます。

一冊の中に国産車を中とした新型車情報、市場記事を柱に、メンテナンス系の記事、パーツに関する記事、クルマの周辺の話題などをぎっしりと詰め込んでいる感じです。

          

「Oh!My街道レーサー」時代の雰囲気を残すのは読者投稿ページの「新橋モーター商会」。読者投稿が減ってしまった中で、はがきやイラストの投稿で構成されるページは貴重だ。

また、黒井尚志氏の「遠慮なしに言わせてもらおう!」といった自動車メーカーや行政、業界に苦言を呈するジャーナリスティックな記事も掲載されています。昔日のイメージを残すのは読者のページ「㈲新橋モーター商会」に投稿されるイラストあたりでしょうか。この中には未だに?「街道レーサー風」のものもあり、根強い人気を感じさせます。反面、かつて「ネタ本」として自動車雑誌業界を引っ張ってきたインパクトに欠けるのも事実でした。

●ホリデーオート創刊時の記事はこちら

yoiijima.hatenablog.com

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