10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、今になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその21回目です。
クルマのエンジンを中心にブラックボックス化しDIYできる要素が少なくなってきた中、2013年時点で「オートメカニック」の編集長を務めるのは丸山克己氏でした。同誌も試行錯誤を続けてしました。
「結局、DIYマインドを持っている人に『こんな提案ができますよ』というかたちにたどり着いた感じです。創刊当時も今も、工具を持って何かしたいというマインドは変わらないと思うので、できるメニュー、やるべきメニューを時代にあわせて、週末に充実した時間を過ごすための実用ガイドに徹しています」
すでにクルマが電子制御の塊になっており、サンデーメカニックが手を出せる部分は大幅に減っていました。機械をいじるというよりは、電気回路をチェックすることがメインになってしまい、それは基本的に自動車ディーラーでなければできないことです。ただ、近年、個人でも買える値段の診断装置(ダイアグテスター)も販売されるようになったことも踏まえ、
「これからそちらが普及すれば、クルマいじりの可能性は膨らみます」と丸山氏は期待をにじませていました。タイヤ交換さえできないドライバー(あるいはさせないような作りのクルマ)が増えるにつれ、同誌もその存在意義が問われる時代となっていたと言えるでしょう。
●オートメカニックの創刊時はこちら
「ル・ボラン」は2004年に発行元が立風書房から親会社の学研パブリッシングに引き継がれました。内容に関しては創刊からあまりスタイルが変わっていないように見えます。欧州車の中でもポルシェ、BMW、アウディなどを中心とした誌面作りです。当時の編集長の吉田聡氏はこう言います。
「本誌は、自動車総合誌ではないですけれども、クラスマガジンの中では、比較的間口を大きくとっていました。そこから読者の嗜好がより狭くなって、情報に関しても取捨選択が厳しくなり、内容がどんどん細分化されていきました」
読者の興味が限定可する部分はどの雑誌も同じですが悩ましいところでしょう。そういう時代の変化と読者の嗜好の変化の中「ル・ボラン」は一番得意としている部分に絞ったといいます。
「あえて方針を言えば、クルマに個性を求めている人に対して情報を発信する雑誌を目指すということでしょうか?クルマに乗ってみたいと感じてもらい、ワクワクさせるような存在を目指しています」と吉田編集長は語ってくれました。
ただ、読者のボリュームゾーンは45歳から50歳くらいとやはり高くなっています。この辺は「もう少し対象年齢を下げた方がいいかもと考えることもあります」とも言っていました。
自動車雑誌の読者の高年齢化というのは、当時から深い問題となっていたように感じます。現在もその状況が続いていますが、私見では当時よりも幾分若い層がクルマに興味を持ってきたという感覚はあります。ただし、その層が雑誌を買うかというと、ネットメディアやyoutubeなどの動画配信サイトの存在を考えると難しいのかもしれません。
●ル・ボランの創刊時の話はこちら
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