10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、今になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその19回目です。
●月刊自家用車創刊時の話はこちら
「月刊自家用車」は、自動車趣味の雑誌ではなく実用雑誌としてのスタンスを取り続けていたために、1990年代以降も他の自動車雑誌とはちょっと違う経緯を辿ったようです。生活必需品としてのクルマを対象としてきた同誌は、比較的堅調に発行部数を維持していたと言います。当時の編集長の清水謙一氏は、
「現在は、日本のモータリゼーションの盛衰でいうと衰の方になっていますが、それでもクルマを買う方はいます。たとえクルマが単なる道具になっていっても、道路がありクルマを必要とする社会があるかぎり、ユーザーのバイヤーズガイドは必要だと思っています」としながらも、「リーマンショックの後は自動車産業も低迷する中で状況は明確に変わり、国産メーカーの工場の海外シフトが増え、さらに日本専用車が減っており、日本市場だけを見てメーカーがクルマを作ることができなくなっていることもあります。クルマの面白さがなくなった面と連動していますが、自動車雑誌も90年代に比べたら勢いが少ないという気がします」と悲観的な見方もしていました。
同誌の特性を物語るエピソードがあります。2011年3月11日の東日本大震災の時のことです。実用誌としての同誌の役割がそこで求められました。
「実はあのとき、福島や宮城の避難所から連絡がきまして、津波でクルマが流されてしまったので、今すぐ本誌を送って欲しいという要望がありました。生活の足としてクルマを買わなければいけないからということでした。このときはつくづく作っていてよかったなあと思いました」
このようなことからも、「月刊自家用車」のユーザーズガイドとしての役割は大きく、これまで通りの役割を果たしていくことになるのでしょう。
●ドライバー創刊時の話はこちら
「ドライバー」は2010年に月2回刊から月刊と旧来の間隔に戻しました。2012年まで編集長を務めた小口泰彦氏はこう語ります。
「若者のクルマ離れと言われますが、それは都心の一部の若者だけで、地方に行くとクルマに乗っています。潜在的な読者はいるのだから、その層にクルマを使って面白いことを提案できたらいいなと思っています」。
クルマを使った面白いことの一環としては、「~アンチ高速道路の旅~ニコニコドライブ」という下野康史氏の連載を続けています(2013年取材時)。高速道路を使わず三桁国道を中心としたドライブ企画です。
「下野さんの連載は、ほとんどクルマのことは書いていません。スポーツカーでもなんでもないクルマでもこういう楽しみ方ができるという提案になればいいなと思っています」。
こうした企画以外にも、同誌には1964年創刊以来の蓄積があるのも強みです。懐古趣味とはいってもアーカイブものの人気は高い。
「それが良いことかどうかわからないですが、昔は良かったと思い出させるような記事も人気があります。おそらく読者の方は、当時の自分と重ね合わせるのでしょうね」
こう小口氏が言う事からもわかるように、読者の年齢層は高めになってしまうようです。10年前の取材当時に平均年齢が40代の半ばということだったので、現在はさらに高くなっていることが予想されます。
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