10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、今になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその23回目です。
自動車雑誌の経営を考えると広告が重要になるのが現実です。そんな中、広告に頼らない雑誌として「ニューモデルマガジンX」があります。同誌は他誌のような広告減の影響は少ないにしろ、部数減の潮流は避けることはできませんでした。出版形態も、三栄書房の発行から、2011年9月号からムックハウスからの発行という変化もありました。そんな中でも、同誌の創刊から現在まで基本的なコンセプトは変わっていないように見えます。神領貢編集長はこう言います。
「本音の記事を書いて、しっかり裏をとる。メーカーの発表に取材に行って、わざわざパブリシティを書く気はないぞと考えています。本音はみんなそうじゃないですか? メーカーの宣伝の片棒を担ぐために雑誌をやっている人はいないはずですから」。
扱うテーマに関してはこう言っています。
「他誌はあまり気にせず、本誌にとってありかなしかという視点しかありません。現在は無料で見られる情報が山程あります。女性誌だって男性誌だって、一般誌だってクルマのことを普通にあつかうようになりました。僕らも自動車メーカーの決算発表もすべて出すようにしています。逆にそういう数字の話が新聞やテレビの独壇場である必要もないわけです。新車誌や中古車誌やチューニング誌だ、モータースポーツ誌だという縦割りも今はあまり意味がないと思っています」
同誌なりの強いこだわりを感じることができました。同誌は2023年の現在でも同じようなスタンスを保っているということでは特筆されると思います。
●ニューモデルマガジンXの創刊時の話はこちら
懐古系自動車雑誌の草分けである「ノスタルジックヒーロー」を見てみると、基本的な路線はそのままといいつつも、時代に合わせた内容を模索しています。当時の石井成人編集長に聞きました。
「誌面に載せるのが60年代、70年代のクルマが中心になりますから、新車のように次から次へ対象となる車種が増えていくことはありません。どうしても飽きてしまう面もあります。登場するクルマもノーマル車ばかりだと差異をつけるのも難しい。そんなことからも、現在は、なるべくオーナーの話を中心にもってくるようにしています。また、完璧なクルマばかりではなく、少し不完全なところがある部分も含めて、そのクルマおとオーナーが長ければ数十年にわかり、どういうふうに歩んできたのかを含めて、なるべく人とクルマの関わりを中心にした記事にしています」
自動車販売台数を見ても、60年代、70年代というのは後年に比べれば絶対数で多いわけではありません。そんな中、新しいクルマでも当然年月が進むうちに古くなるので、扱う年代の対象車を増やしてもいいのでは?とも思いますが、そう簡単なことでもないようです。
「2004年に80年代のクルマを入れたことがありました。そのとき80年代のクルマでも生産されたから25年経ちますから、ビンテージカーと認識してもしかるべきという判断でした。しかし、読者にはあまり支持されませんでした。古くからのファンの人たちにとって、ウレタンバンパーのクルマはちょっと新しすぎてノスヒロにふさわしくないというお叱りの超えがあったのです」。
そういうこともあり、同誌とは別に80年代のクルマをメインとしたハチマルヒーローを増刊として出したという経緯もあります。ただ、ノスヒロ創刊当時に取り上げたクルマが、その当時何年落ちかというと、15年落ちくらい。2000年代にAE86を取り上げたとしても20年落ちと考えると、一概に年代で語れないということでしょう。
ただ、自動車メディアとして考えると、旧車イベントも自治体として地元の商工会やお祭りと一体になって行う機械が増えており、読者層は厚くなっている一因となっているのでしょう。2013年現在での自動車雑誌売上ランキングを見ると「ノスタルジックヒーロー」とこの後に紹介する「オールド・タイマー」がトップを争うようなところもありました。
●ノスタルジックヒーロ創刊時の話はこちら
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