自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車雑誌、悪戦苦闘の100年史(22)

10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーション自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその22回目です。

「カー・マガジン」(2012年2月号より)は、クオリティ誌路線を歩み、外国車を取り上げる傾向が強くなってきた。

「カー・マガジン」(2012年2月号より)。同誌の人気企画「100万円でドロ沼に陥る!?」。この辺はより身近に趣味としてのクルマを楽しむための企画だ。

2013年当時、「カー・マガジン」は、比較的堅調を保っていました。理由としては趣味性に特化したことと固定読者が多いののが一因と考えられます。当時の同誌の澤村信編集長に聞きました。

「出版は厳しい環境ですけれども、本誌の売れ行きは自体がそんなに変わりません。こういう趣味性の高い本だからというのもあります」

同誌で長く続いている企画としては、「100万円でドロ沼に陥る!?」があります。この企画は、同誌の懇意にしているショップなどから、読者にオススメのクルマを100万円前後で提案してもらうというものです。

「100ドロは鉄板企画です。年末に行うようにしていますが、ありがたいことに部数が伸びます」と澤村編集長。

ただ、広告については厳しいことを澤村氏も否定しませんでした。

「メーカーの広告に頼らないで、読者目線の本にしていくのがベストなんだろうと思います。雑誌の場合は広告ありきの記事として見る人もいるので、そこから脱却するいいチャンスなのかもしれません。一方で、ショップの広告は、読者にとっては重要な情報源だとも思っています」。

雑誌にとっては広告は生命線のひとつであることは間違いありません。読者の中にはタイアップ企画などで、スポンサー偏重につながりやすいことを嫌う層もいる一方で広告を情報源とみなす層もいます。ただ、全体的に広告増が見込めない現状を考えていくと、同誌に関わらず広告に頼らない方向の雑誌は増えていくと考えられます。

●(スクランブル)カーマガジンの創刊時の話はこちら。

yoiijima.hatenablog.com

ティーポ」は、イタリア車、フランス車などのラテン系のクルマを中心にしつつ、幅広い車種を取り上げる方針を取っている。

2013年に行われた「フィアット パンダ キャラバン」。フィアットパンダで日本一周することによって読者との交流を深めるのが目的という。

「カー・マガジン」と同じくネコ・パブリッシングから発売されている「ティーポ」を見てみます。当時の編集長の佐藤考洋氏に聞きました。

「創刊当時と同じく、自分たちが興味のあるものや、面白そうだというものに対して共感を得てもらう誌面づくりです。クルマのスペックも重要ですが、それだけではなくて、そのクルマ全体の雰囲気とか、オーナーのライフスタイルなどをうまく伝えて、共感を得てもらえばいいのではないかと考えています」

ティーポはイタリア車、フランス車という好みが別れたり、壊れるといわれるクルマを多く扱っているが、それでもデザインが光っていたり、排気音がよかったりという部分に共感でき、自分の主張ができれば良いのではないかという考え方をしているということでした。

また、同誌の201号で編集プロダクションの「エディトリアル・クリッパー」が休止し、ネコ・パブリッシングにそのまま編集部が移籍しました。これも大きな転機となりましたが内容はその軸を大きく変えることはありませんでした。

一貫して守り続けてきたことは、「読者との交流を大切にし、より読者に近い距離にいようということ」だとも佐藤編集長は言います。

その現れとして、同誌がやっている企画に「日本一周チャレンジ」があります。この主旨は、編集部員がクルマに乗って日本各地をめぐり、読者との交流を深めることです。2010年に行い、さらに2013年も行っています。

「いわゆるエンスー雑誌と言われることもありますが、そういうわけでもありません。全体を見てバランスを考えて国産でも楽しければいいというスタンスを保っています」と佐藤編集長は締めくくりました。

ティーポの創刊時の話はこちら。

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