自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(7)燃焼室の構造

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

燃焼室はシリンダーヘッド内部を天井に、ピストンヘッドを床にして構成されるスペースです。吸排気ポートは燃焼室上に設けられ、吸排気バルブがそのフタとなります。

エンジンが動くときには、強い膨張力が発生します。燃焼室のサイズや形状はそれに大きな影響を与えます。形状はクサビ型、バスタブ型、多球型、半球型などさまざまですが、それぞれ一長一短があり、現在はペントルーフ型が主流になっています。

出典:続・自動車メカニズムの基礎知識(日刊工業新聞

その理由は、1気筒あたり4バルブが当たり前になったことや、点火した際の火炎の燃え広がり方やスピードにアドバンテージがあることです。例えばクサビ型では燃焼室の一方に吸排気バルブが並ぶようなカタチになりあまり好ましくありません。さらにペントルーフ型はコンパクトで表面に凹凸がないこと、4バルブ化した際にプラグホール(スパークプラグを固定する穴)をバルブの中心にできることからも燃焼の際に有利になります。

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

燃焼室の性能を表す基準にS/V比というものがあります。Sは燃焼室の表面積、Vは燃焼室の容積です。この燃焼室の容積に対して表面積が狭いほうが火炎の燃え広がり方がスムーズで失われる熱損失が少なくなります。燃焼室の表面積が広いと、せっかく発生した熱がそこから逃げてしまうと考えるとわかりやすいと思います。半球型は燃焼室の中心にプラグホールを持ってこれるなどの点はすぐれていますが、表面積が広くなってしまいます。その点でもペントルーフ型の燃焼室は合理的と言えます。