圧縮比とは、ピストンが下死点(一番下った場所)にあるときの行程容積と燃焼室の容積を加えた容積(シリンダー容積)を、燃焼室の容積で割った数値のことです。圧縮比が高い=数値が大きいということは、燃焼室の容積が相対的に小さくなるということですから、より強く圧縮できることになります。
エンジンが動くとき、ピストンの上昇にともないギリギリまで圧縮された状態で混合気が燃焼すると、それだけ強い燃焼圧力が発生しパワーが上がる方向になります。エンジン性能を見るときに圧縮比はひとつの指標になります。
だからといって、やみくもに圧縮比を高くするわけにもいきません。エンジン内のパーツの負担も大きくなることもありますが、一番問題になるのはノッキングが起こることです。これは圧縮された混合気がスパークプラグで点火される前に燃焼する(異常燃焼)を起こす現象です。
加速しているときなどに、カリカリ、キンキンという金属音がエンジンから聞こえることがあったら、ノッキングを起こしている可能性があります。この状態が続くとピストンが溶けたり焼き付いたりという致命的なダメージをエンジンに与えることがあります。
圧縮比の高いエンジンにはプレミアムガソリンを使用しますが、これは高オクタンのためにノッキングが起こりにくいという性質があるという理由からです。
高性能エンジンというとターボエンジンを思い浮かべるかもしれません。しかし、ターボエンジンは自然吸気園児にに比べて圧縮比が低くなる方向です。
ターボがエンジン内により多くの空気を圧縮して送り込みます。ここで高圧縮比でさらに圧縮してしまうと、やはりノッキングが起こりやすくなるので下げざるを得ないという理由があります。インタークーラーなどで空気を冷却すれば、ある程度圧縮比を高められます。
圧縮比は、自然吸気のエンジンで11.0程度いわれて来ましたが、現在では14.0などというエンジンもあります。これはピストンの形状を工夫したり、ガソリンを噴射するインジェクターの制御を精密にしたりして、燃焼室の温度をコントロールすることで可能になったことです。