自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(27)点火システムのしくみ【その3】(フルトラ式とセミトラ式)

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

ポイント式では、コンタクトポイントに火花が出るというデメリットがあります。回路にコンデンサーを入れてそれを防ぎますが、長く使用しているとポイントの接触面が焼けたり、高速回転のときうまく作動しない場合がありました。そこで機械式のポイントの代わりに、トランジスタを使って電流を遮断する方法が考えられました。

これをフルトランジスタ(フルトラ)式といいますが、1次電流の断続をポイントではなく電気式に行います。

具体的には、ポイント式のカムとポイントの代わりに、シグナルローターとピックアップコイルがあり、ここで発生したベース電流を使います。ディストリビューター内のローターとピックアップコイルによって構成されるシステムをシグナルジェネレーターと呼びます。

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

 

フルトラ式では、シグナルジェネレーターで点火のタイミングを感知し、電気信号をイグナイター(トランジスタ)に送ります。イグナイターでは、わずかな電流を大幅にアップできるトランジスタの特性を利用して、シグナルジェネレーターからのベース電流を大きな電流に増幅しイグニッションコイルから点火に必要な高電圧を生み出すのです。

この方式を採用することで、コンタクトブレーカーのポイントに起因するトラブルがなくなりました。

フルトラ式のほかにセミトランジスタセミトラ)式というシステムもあります。これは点火信号を送るのをシグナルジェネレーターではなく、もともとあったポイントを残しスイッチとして代用される方式です。コンタクトポイントはありますが、イグナイターを使用するために12Vではなく0.5V程度の微弱な電圧で済み、ポイントへの負担が減るなどのメリットがあります。