前回の最後の方に「DOHCかSOHCか、あるいはOHVかよりもエンジンの吸気、排気のタイミング、スパークプラグの点火時期などを最適化させるほうがパワーに関しては重要になる場合もあります」と書きました。今回はその中の吸排気のタイミング(バルブタイミング)について書きたいと思います。
上の図のように4サイクルエンジンは吸入→圧縮→燃焼→排気の順に続きます。これをひとつずつ処理するのは説明的にはありですが、あまり現実的ではありません。というのは空気にも質量があるために、混合気が吸気バルブを開けば一気に燃焼室に入ってくるわけではないからです。
エンジン回転が高くなると、ピストンが上死点に来てからおもむろに吸気バルブを開くのではなく、排気行程の終わりの近くのピストンが上死点に来る少し前にあらかじめ開き始めます。そうすることによって、ピストンが下がり始めると同時に混合気を吸い込むことができます(中図)。
排気バルブも同様で、ピストンが上死点を過ぎても少しの間開いています。こうすることで燃焼ガスの高圧が出ていく力を利用して吸気を効率よくできるようになります。
つまり、排気行程の終わり近くと吸気行程のはじまりには、吸排気バルブの両方が開いている時間ができるわけで、これを「バルブオーバーラップ」と言います。
これはバルブタイミングダイヤグラムで表されます(図の内側の吸入の区域から右回りに見ていくとわかりやすいと思います)。
基本的に、高回転型のエンジンにしたい場合はバルブオーバーラップを大きく取る必要があります。その際のデメリットとしては低回転ではガソリンと空気の混合が不十分になり、低回転でエンジン回転が不安定になることがあります。逆に高回転を使わない実用エンジンではバルブオーバラップを小さく取ればいいということになります。このとき体感的には低回転のトルクが太くなったという印象になったりもします。このへんの兼ね合いがエンジンの性格を決める一因になります。
↓YouTubeチャンネルもやっています。