自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(24)運転状況に応じた燃料噴射量

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

理論空燃比は空気14.7:燃料1で、これが完全燃焼できる空気と燃料の割合です。ただ、エンジンのパワーだけに限ってみると、もう少し燃料の量が多い12:1くらいのところで燃焼速度が速くなります。ここを最大出力空燃比といいます。

簡単に言えば、ガソリンが多めの方がよく燃えるということです。これが「リッチ」の状態ですが多めがいいといっても、ある程度の話で多すぎれば出力はかえって落ちてしまいます。

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図に示しましたが、エンジンの始動時には5:1くらいの空燃比にすることが必要です。その理由は燃焼にはガソリンをただ出すのではなく霧化が必要で、エンジンが冷えている状態では霧化しづらく、燃料を噴射してもポート壁に付着してしまうために、それを見越して多めにガソリンを噴射することが必要になるのです。

燃費を考えた場合は、理論空燃比より空気が多い17:1くらいのところが良くなります。燃焼するときに空気と出会えないガソリンを少なくして、空気が少し残るくらいがいいということになります。この状態が「リーン」です。

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

キャブレターを使用していた時代には、この空燃比の調整が難しく、キャブセッティングという技術が必要とされました。とくに速さを競うレーシングカーなどでは、それによって結果が違ってしまう面もあり、重要な部分でした。

現在では、こうした制御は電子制御式のインジェクションによって行われています。センサーによりコンピューターがエンジンの置かれた状況を判断しながら空燃比の制御を行います。

基本噴射量をベースに、始動時増量、暖気増量、加速時に必要となる出力増量など、必要な量の燃料を適切なタイミングで噴射して、理想的な空燃比となるように制御されているのです。