自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

2017年11月25日の写真から。「2017 トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑」でのベイカーエレクトリック。

左はベンツのパテントモトールヴァーゲン(の確かレプリカ)で、右がベイカーエレクトリック。

2024年なんていうのは、子供の頃の感覚で言えばSFの未来です。1970年代あたりの雰囲気から見れば、石油なんてとうの昔に枯渇してしまい、電気自動車が当たり前のはずでした。当時の子供向けの本もけっこう未来のクルマとして電気自動車が掲載されていた記憶があります。

で、写真は昨日に引き続いてクラシックカー・フェスティバルから。トヨタ博物館所蔵のベンツ・パテントモトールヴァーゲン(再現車)とベイカーエレクトリックです。1885年の秋にベンツはガソリンエンジンで走る3輪車の開発に成功しました。ただ、まだ自動車の動力として蒸気機関がいいのか、ガソリンエンジンがいいのか、電気モーターがいいのか?決着がついていない状況が続きます。

ヨーロッパでの自動車は、貴族の馬車の延長という感じで富裕層の乗り物という面がありました。一方、アメリカでは産業としての自動車が注目されたようです。まあアメリカンドリーム的な何かでしょう。

動力としてはエンジンかモーターかですが、ガソリンエンジンを搭載する自動車の製造に関しては、1895年にジョージ・B・セルデンという人が特許を取っていたために、特許料を支払わなければならないという制約がありました。

そんな背景の中、1899年にアメリカで生産が始まった電気自動車がベーカーエレクトリックです。面倒な上に危険が伴うクランクでのエンジン始動がいらず、ギヤによる変速も必要なく、しかも排ガスも出さずに静かということでかなり優秀な自動車とされていたそうです。

とくに上記の理由から女性に人気があったとも聞いたことがあります。ただ、速く走らせようとすると電力の消耗が多く、航続距離は厳しいという問題点は現代と同じでした。

一方、前記の特許の問題がある中でもヘンリー・フォードガソリンエンジンの自動車を作り始めます。そしてフォードT型(1908)年に完成すると好評を得ると同時に、前記の特許の問題も1911年にフォードとセルデンの裁判で特許を無効とし、決着を付けました。

考えてみると、セルデンの特許とは違いますが、環境問題という制約の中でエンジンの製作が制限されて電機自動車が作られ、現代とはレベルも技術も違うにしろバッテリー容量の問題があって、となんとなく今の状況に似ているような気がします。

こんな状況ではタイヤのない自動車(?)が空中を飛び交うようなSFの世界はまだまだ先のようです。

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