自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車の基礎知識(12)バルブスプリングのしくみ

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

エンジンの燃焼室のフタとなる吸排気バルブは、カムシャフトに押されることで開閉します。バルブが開くときはカム山が押しますが、閉じるときはバルブスプリングによって戻されます。今回はちょっと見逃されガチなバルブスプリングを中心に解説します。

バルブスプリングに求められるのは、カムの動きに確実に追従することです。そのためには適切な強さのバルブスプリングが必要になります。

高回転が可能なエンジンの方が強いスプリングを使う傾向になります。これはエンジンが高回転になり、バルブの開閉スピードが速くなったときに、スプリングの伸縮がカムの回転に追いつかなくならないようにするためです。

高回転では、スプリングが共振を起こすバルブサージングを起こす恐れもあり、最悪の場合はバルブやバルブシート、バルブスプリングが破損する場合もあります。

ただし、強すぎるするバルブスプリングはフリクションロス(摩擦による回転損失)になります。さらにカム山の摩耗にもつながり、良いことはありません。

出典:「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識(日刊工業新聞社)」

バルブサージングを避ける手段として、アウターとインナーの二重のバルブスプリングを使用する方法があります。これは固有振動数の違う2つのスプリングを用いることで共振を避けます。

また不等ピッチバルブスプリングを仕様する手段もあります。動きが遅い場合はスプリングの柔らかい部分を、速くなると硬い部分を使うことになり、バルブサージングを防ぎます。

特殊ではありますが、毎分1万回転以上まで回すF1マシンのエンジンでは、スプリングを使用した際のバルブサージングやバルブの破損を防ぐために、圧縮エアをバルブスプリングの代わりに使用した例もあります。

この部分もエンジンにとっては重要な課題であり、これからもさまざまな試みが行われていくと考えられます。

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