自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

ホンダの「SPORT HYBRID SH-AWD」。プレリュードからレジェンド、そしてNSXの系譜

RJCブリテン(年次報告書)にホンダレジェンドの3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」についての解説を書いた。

http://www.npo-rjc.jp/bulletin/RJC_bulletin_25.pdf

今年から新入会員にはカーオブザイヤーの投票権がないとかで、私はおおよそブリテン作りとは関係ないと思っていた(別にイヤミをいっているつもりはないが……)。しかも、このシステム、私がRJCに入る前に発表されたもので、記者発表会にも呼ばれていない。ただ、書き手が足りないとなれば断ることもできない。基本的に真面目な? 私は「ホンダレジェンドのすべて(三栄書房)」を買い求め(!)、さらにはHONDAのウェブの内容と合わせて800字程度の満たない短い文にまとめた。もちろん原稿料はロハ。

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3モーターハイブリッドシステムとは、大枠で言えばエンジンとモーターのハイブリッドで前輪を駆動し、後輪の左右輪も必要に応じてモーターで駆動するというシステムで、それが走行状態によってベストな駆動方式に切り替わるのがというもの。モーターによるリヤのトルクベクタリングもトピックだ。ところで、この原稿を調べ調べ書いている途中で、1990年代のホンダ車の発表会で、トルクベクタリング機構があったのを思い出した。「おそらくプレリュードだったかな?」ということでグーグル検索すると1996年にプレリュードに採用されたATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)だった。これは駆動輪であるフロントに採用されたもので、かなり画期的な印象を持った記憶がある。

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その頃はモータースポーツ誌の編集部員をしていたせいもあり、ジムカーナなどで使えるかも? と思った反面、下手をするとすぐに忘れられていく技術になるのでは? という気持ちも持った記憶がある。当時、大々的に発表された技術が、次のモデルでは採用されていないなんてことがけっこうあったように思う。結局ATTSはモータースポーツでは話題にされることもなくプレリュードが姿を消すとともに終わった。

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しかし、ATTSは2004年にSH-AWDとなりレジェンドに採用。リヤのトルクベクタリングに用いられるようになり、今回のツインモーターを使用した「SPORT HYBRID SH-AWD」まで忘れ去られずに進化してきたのは、いい意味で期待を裏切られた気持ちがする。大げさに言えば「ここで再会するとは!」という感じとでも言えばいいだろうか。もちろん今回はモーターで行なうわけだから技術的には違うとはいえ、次期NSXでは再びフロント側でトルクベクタリングが行なわれるということは、約20年を経てスポーツカーに相応しいものができたということだろう。

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一つの技術に対するこのこだわりは(今やあまり見られなくなったといわれる?)紛うことのないHONDAスピリットだと思う。ただ、ちょっと機構的に複雑過ぎるかな……。いやその前に値段が高すぎるか?

 

(後日談)

ATTSのことをRJCや他のメンバーに話したところ記憶していないようだった。ちょっと優越感(笑)