自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車本や雑誌づくりの際の表記の統一について。

編集委員を務めた「自動車用語辞典(グランプリ出版)」の凡例です。ここでは適宜という判断基準です。出版社の意向には逆らえません。

いつも昔話ばかりなので、たまには本・雑誌づくりの現場の話を。主に表記のことについてです。このところ気になるのは、電気自動車のことをEV車、ハイブリッド車のことHV車と表記していることです。このVはvehicle(車両)という意味なので、この場合、日本語にすると電気自動車車、ハイブリッド車車となってしまいます。「頭痛が痛い」パターンです。正しい表記はEV、HVとなります。プラグインハイブリッド車もPHV車ではなくPHVとなりますので、こういう表記の媒体には内容も含めて?注意が必要です。

同じような例で、「排気ガス」という表記もあります。これは間違いとはいいませんが、「気」と「ガス(気体)」が重なるので、排ガスガスもしくは排気気になってしまいます。あとアメリカ英語で「gas」だと「ガソリン」の意味もあるのでここでも違和感があります。「排ガス」もしくは「排出ガス」が個人的にすっきりします。

次も多い例です。4サイクルエンジン(内燃機関)では吸気→圧縮→爆発→排気の行程があると説明される場合がありますが、爆発ではなく燃焼がより正確です。内燃機関をICE(Internal Combustion Engine)という言い方もされることが多くなりました。Combustionは燃焼という意味です。爆発ならばExplosionになります。

駆動系では、マニュアルトランスミッションのことを「ミッション」とさくっと言ってしまう例も見られます。ミッションと言ってしまえばオートマチックトランスミッションもミッションはミッションです。ただ、さすがにいちいちこう書くのも長ったらしいのでMT、ATとする方がいいかと思います。個人的にはそれにギヤ段数を加えて5速MT、6速MTのように書くことが多いです。

ギヤつながりですが、デファレンシャルギヤは「デフ」に略していいと思うのですが、これは日本語にすると差動装置になります。コーナリングのときに駆動する内輪と外輪に「差」を付けるのでこう呼ばれるのですが、表記が作動装置になっているのもたまに見かけます。同様にLSD(リミテッドスリップデファレンシャルギヤ)の解説で差動制限装置を作動制限装置としているのもしばしば見かけます。これは単なる誤植ですが、おそらく手書き原稿時代には少なかったと思います。パソコンの文字変換によって一発で「作動」と出るために多くなった間違いのような感じもします。

あとはギヤとギア、ショックアブソーバーとショックアブソーバ、シャシーとシャーシ、ラジエターとラジエータみたいなのは、その媒体ごとの判断になります。JIS規格の表記に合わせるとか、グーグル検索してヒット数が多い方を一般的と判断してそちらにするとか、基本的に編集長判断になります。

表記の統一は複数の媒体に書くフリーのライターが行うのは至難のワザなので、基本編集部におまかせすることになります。もし不統一があったとしてもライターの責任とは言い切れないので責めないでください…。