自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車雑誌、悪戦苦闘の100年史・モータースポーツ誌編(10)

11年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーション自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身は意外と?やわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前(※2024年3月5日現在出版社在庫分のみになっているようです)に、そこから抜粋したり、になって思うことを書いてみたいと思います。自動車雑誌編は24回で完結していますが、今回は同書の中で残っていたモータースポーツ誌編の第10回となります。

休刊を経て、定期購読のみでの発売となった新生「プレイドライブ」。メインとするのは国内ラリー、ダートトライアルジムカーナと完全に参加型、国内Bライセンス競技に絞った形だった。

ラリーを中心にしたモータースポーツ専門誌として地位を築いてきた「プレイドライブ」も変化していかざるを得ませんでした。2000年代を迎えるにあたって、国内ラリーのグローバル化への対応も必要になってきたのです。1999年から2007年まで同誌の編集長を務めた伊藤忍さんに聞きました。

「国内ラリーも海外ラリーに準じて、SS方式にして、さらにギャラリーステージを作ろうという流れになってきました。JRCA(ジャパニーズ・ラリー・コンペティション・アソシエイション)が主導していきましたが、主催者にとっては大変な面もあったと思います。それでもWRCと国内ラリーは全然違うことをやっているのはまずいという考えはありました。さらにこれまでの国内ラリーに慣れ親しんだ参加者が離れて、一時的にせよ競技人口が減ってしまう可能性も考えました。それでも、さらに発展させようと望むのだったら、変革してく方向でやる必要があると思っています」

このような努力の中で、国内でも国際ラリーが開催されるようになります。この辺りについては伊藤さんとともに編集部員(後に編集長)として同誌に関わってきた佐藤均さんに聞きました。

ラリージャパンの開催はまさに黒船襲来でした。本誌もそれに対する情報を出していかなければいけません。そこでFIAのレギュレーション解説やグループNの車両作りも記事にしました。もちろん、それらは雑誌として必要な要素ではありますが、実際にそれまで本誌を支えてくれた読者にとって必要な情報だったのかというと疑問が残る部分です。メディアの作り手として、読者が欲しい情報をリアルに出していかなければいけない使命を持っていますが、より高みを目指すための専門誌という枠組みを勝手に規程してしまったこともあり、うまく読者が欲しい情報を出せていなかった面はあるかもしれません」

国内ラリーもSS中心のFIA規定に近い形で行われるようになり、スポーツ性が増したのは確か。惜しむらくは、それによって参加者が増えたとは言えない部分だろう。

プレイドライブ」が実際に国際ラリーに参加するための記事を書いたとしても、実際に出場するという人は限られていました。この辺が、旧来の比較的参加しやすかった国内ラリーとの違いでしょう。さらにこのタイミングで国内景気が冷え込んでいたのも不幸なことでした。モータースポーツに参加するためのコスト高という問題もあり、ハイパワー4WDが主力となっていき、車両価格はもちろんランニングコストが高くなっていました。こうしたこともモータースポーツ人口の減少と無縁ではないでしょう。

主催者はJAFライセンスなしでも参加できるようなイベントやクラスを積極的に設ける努力をしていましたが金銭的な負担の大きいモータースポーツは国内景気と連動して縮小することは避けられませんでした。そして「プレイドライブ」は2008年に一旦休館することになります。これはモータースポーツファンだけでなく、自動車雑誌全体でも大きなできごとでした。同誌はその後、通信販売メインで復活。2024年現在でも発行を続けています。

※あと一回蛇足的に総括の記事を入れて最終回にします。

👇️クリックしていただけると励みになります。