自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

自動車雑誌、悪戦苦闘の100年史・モータースポーツ誌編(9)

11年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーション自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身は意外と?やわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前(※2024年3月5日現在出版社在庫分のみになっているようです)に、そこから抜粋したり、になって思うことを書いてみたいと思います。自動車雑誌編は24回で完結していますが、今回は同書の中で残っていたモータースポーツ誌編の第9回となります。

「auto sport]誌。2012年当時は隔週刊。メインで扱うのはスーパーGT。F1は速報誌、専門誌があるためにモータースポーツ専門誌内でさえ細分化が行われている。

バブル崩壊リーマンショック後の各モータースポーツ専門誌がどうなっていったかを見ていきます。2001年に「AUTO SPORT」を発行していた三栄書房と「Racing on」を発行していたニューズ出版が業務効率化のために共同で編集プロダクション「イデア」を設立。本来ライバル誌同士が連合するということで話題になりました。これで「AUTO SPORT」は月2回刊から隔週刊を経て、より速報性を重視した週刊となります。一方「Racing on」は、月2回刊から月刊としてワンテーマを掘り下げる方向となってきます。

ここでは「auto sport」(2012年12月よりロゴをスモールレターに変更)編集長を務めた高橋浩司さん(当時、株式会社サンズ制作本部長)に聞きました。

「まず「AUTO SPORT」を週刊にしたのは、イデアができてすぐの頃です。チームを増強しながら進めていきました。初期はレースレポート班、ニュース班、特集班と3班制を敷いてやっていました。社内でデザイン、DTPのワークフローも組めたので、それは強みでした。ただ、全体的な傾向としては雑誌も売れなくなってきましたし、次第に体制的にもシュリンクしていったのも事実です。モータースポーツの世界というのは経済が活発なときは華やかですが、厳しいときにはそれが反映されてしまう業界でもあります。スーパーGTも自動車メーカー3社がなんとか活動しています。そこを背骨にしてGT300でプライベーターを含めていろいろなクルマが出てきている。これはいい流れです。スポンサーやチームオーナーもいろいろなジャンルの方がいろいろな考え方で出てくるようになっています。例えば痛車的なチームが参入しているのも象徴でしょう。そうした広がりはあると思いますし、これからもそういう流れを作っていかないといけないと思います」

この号ではFIA GT3が参加しているニュルブルクリンク24が特集されている。ツーリングカー、スーパーGTが人気なのに比べ、国内最高峰であるスーパーフォーミュラを含め、オープンホイールレーシングカーの人気は低調という時代だった。

2012年当時「auto sport」誌が主軸としているのはスーパーGTでした。販売部数を考えれば、そちらに注力しなければならないのが現実でもあるでしょう。

「F1は専門誌があります。本誌は本誌のスタンスでF1も取り上げていきますけれども、やはり主力は反応がリニアなスーパーGTになります。それとフォーミュラ・ニッポン(2013年よりスーパーフォーミュラ)は国内で行われますので、観戦に行ける能動的なカテゴリーと言えます。F1は全体的にファンは多く、日本グランプリは見に行けますが、観戦はテレビが主体になります。F1の情報はインターネットや「F1速報」などの速報誌も含めて十分にあります。対してスーパーGTの情報は本誌と各チームの公式ホームページしかありません。雑誌が売れないことには出版社も成り立ちませんから、どうしてもお客さんのいるところに力を入れなければなりません。今後は「AUTO SPORT web」を本誌と練度してやっていきますのおで、インターネットでの情報の出し方を考えてユーザーのニーズにあったものを整えていくことを目指しています。一方で雑誌のコンテンツもタブレット型PCの発展にともなってアプリも活用して、いろいろな形で読めるようにしていかないと厳しいと思っています」

モータースポーツ専門誌として、日本のモータリゼーションを支えてきた同誌も変革を求められている時期と言えるでしょう(この取材時はインターネットでの動画配信はまだ本格化していませんでしたから、時代は思ったよりも早く変わっていきました)。

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