11年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身は意外と?やわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前(※2024年3月5日現在出版社在庫分のみになっているようです)に、そこから抜粋したり、今になって思うことを書いてみたいと思います。自動車雑誌編は24回で完結していますが、今回は同書の中で残っていたモータースポーツ誌編の第7回となります。
モータースポーツを見るだけではなく、自ら参加しようという層がとくに増えたのが1980年代後半です。国内競技はJAFが競技ライセンスを発行しているが、年々ライセンスホルダーが増えました。国内Aライセンスもだが、講習会に参加すれば取得できる国内Bライセンス競技に顕著で、ジムカーナ、ダートトライアル、ラリーの競技人口が増えていた時期です。
この頃「オートテクニック」が創刊当時の参加する側というスタンスから外れていった時期でもあります。同誌の発行元である山海堂からは、1987年にF1速報誌である「グランプリエクスプレス(GPX)」が創刊され、主力がそちらに移っていた面もあるでしょう。
そうした流れの中で1987年に「スピードマインド」が創刊されました。これはモータースポーツ参加型マガジンと銘打ち、「オートテクニック」の編集長であった飯塚昭三さんが企画したもので、創刊編集長となりました。同誌創刊号には飯塚さんが「このエネルギーをどうする!」と題したコラムを寄稿しています。
内容はJAFが国内モータースポーツを統括している現状とその意味、変化した国内モータースポーツ界と、モータースポーツに適したクルマが増えていることを踏まえて、
「非公認競技の増加や、峠族の出現は走り屋のエネルギーをもはやJAFが吸収できなくなった表れではないだろうか。モータースポーツの統括力を越えた結果ではないだろうか。JAFと運輸省(当時)との関係でエネルギーが暴走しはじめていると言っても過言ではない。現在の状況が一過性のものならいいが、このエネルギーが急に衰えるとも思えない。JAFのワクから外れたこのエネルギーをどういう方向に持っていくのか、これはJAFはもちろん、自動車メーカーおよび関連業界が真剣に考えていくべき問題ではないだろうか。取り締まり当局も、単に締め付けるだけで問題が解決すると思って欲しくない」
としつつ、当時の参加型モータースポーツの周辺をもういちど見つめ直し、対処の方向を見出すことを提唱しています。これは「オプション」や「CARBOY」といった峠を含めた「公道路線」をいった一般自動車誌も多分に意識してのことでしょう。
上記のような主旨に基づいたスピードマインド創刊号では、「オートテクニック」のようにトップカテゴリーのレースレポートをメインにすることなく、富士フレッシュマンレース、地方選手権ジムカーナ、ダートトライアル、ラリー選手権のレポートを行っている。WEC in JAPAN(世界耐久選手権)も、そのサポートレースのみのレポートを掲載するなど、それまでのモータースポーツ専門誌では見られない構成となっています。
連載企画でも「サーキットの走り方」としてトヨタ、日産、いすゞでワークスドライバーを務めた津々見友彦氏が執筆。また「Speed mindジムカーナレッスン」として、トップジムカーナドライバーとして活躍していた高橋宏尚選手による読者参加の誌上レッスンや、後には熱血桜井道場!として全日本ラリードライバーの桜井幸彦選手によるダートドライビングを行うなど、参加する人のための役に立つモータースポーツ誌のスタンスを明確にしています。
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