日刊工業新聞社から発行した「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」は、まあ私的にはスマッシュヒットくらいにはなりました。やはりクルマの中心は「エンジン」で、そこに興味があったり基本的なことを知りたい読者は多いということも感じることができました。
担当してくれた編集者氏は早速「次も書いてください」といいますが、問題となったのは何を書くか?でした。私としてはなんとなくですが、エンジンとかシャシーとかサスペンションというふうにパートごとにわけてしまうとどうしても読者が限らることを感じていました。前回も触れた橋田卓也さんの「きちんと知りたい!自動車メカニズムの基礎知識」もそうなのですが、クルマを丸ごと取り扱った方が読者が広がります。
エンジンは主役だからまだ成り立ちますが、例えば「ドライブトレインの基礎知識」とかにすると興味深くはありますが、けっこう引いてしまう方はいるのではないかと思います。
「私はクルマ全体のことを書きたいですね」
「でもそれはもう橋田さんが書いているから難しいですよ」
「でもその方が確実に売れますよ」
「それはそうかもしれないけど、橋田さんの本があるから企画が通らないだろうなあ」
みたいなやりとりを編集者氏としましたが、あまりいい案は浮かびません。となると頭に浮かぶのはグランプリ出版からも出した「モータースポーツのためのチューニング入門」をより一般的にした「チューニング系」です。ただ、それが日刊工業新聞のスタンスと合うのかどうか?という問題もあります。
「じゃあ、メンテナンスだったらどうだろう」と編集者氏。私はなんとなくですが、わりとライトなチューニングと合わせて一冊にできるかなという気持ちを持ちました。
そんな感じで「メンテ&チューニング」というテーマになったのですが、編集者的には「基礎知識」から一段階レベルとを上げたいとも言います。
「応用知識」、「レベルアップ知識」、「中級知識」……といろいろ考えた中で落ち着いたのが「実用知識」でした。これまでタイトルは出版社がほぼ独断で決まっていたのですが、そこまで関わらせてもらったということでは感謝しています。
中身は動画でも触れているのですが、各部の構造を踏まえて、メンテやチューニングについてなるべく実用的なところに触れています。とくにトランスミッションやデファレンシャルギヤなどについてはWeb情報などではあまり見られない部分まで掲載しています。
2016年10月に発売したこの本も順調に増刷することになり、編集者氏からは「おかげできちんと知りたいシリーズが定着しました」と過分な言葉をいただくことができました。そして翌年の出版にもつながっていきます。