自動車ライター飯嶋洋治のブログ

編集者、ライターです。「モータースポーツ入門」、「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」(ともにグランプリ出版)、「スバル・サンバー 人々の生活を支え続ける軽自動車の半世紀」(三樹書房)、「きちんと知りたい!自動車エンジンの基礎知識」(日刊工業新聞社)など著書多数。たまにサーキットを走ります。

なんとなく欧州車。昭和の終わりに編集アルバイトでジェミニZZ/Rを買う

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アルバイトではあったがモータースポーツ専門誌の編集部員となった私は、「それなりのクルマ」を持ちたいと思うようになった。当時はまだAE86レビン/トレノの最終後期型がぎりぎりで買える時代だった。

しかし、安いアルバイト料ではまったく手が出ない。ダートトライアルに参加することを考えていたこともあって、当時活躍していたスズキ・カルタスGTIも考えカタログも取り寄せた。ただ、FF車よりFR車が欲しいという気持ちが大きかった。それにあまりかっこよくなかった。

自分の編集していた雑誌のレースレポートを見ると、それまであまり気にしていなかったクルマが岡山県中山サーキットでレースに参加しているのを知った。それがいすゞジェミニZZ/Rだ。ちょっとこの車種について調べてみるとなかなかおもしろい。

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まず、ベースはドイツのオペル・カデットと同じだ。これは当時、米国のGMのグローバルカー構想の一貫の中で実現したことだ。いすゞGM資本提携関係にあり、GMの子会社となっていたオペルのカデットとプラットフォームを同一としたクルマを作っていたのだ。それがジェミニ(双子座)の由来でもある。

エンジンはオペル製ではなく、いすゞオリジナルのG180W型と呼ばれる1.8LのDOHCが搭載されていた。1気筒あたり2バルブではあったが、ビッグバルブ化されており、AE86に搭載される1.6LDOHC16バルブに比べてトルクフルなのは魅力だ。

サスペンションも凝ったもので。ダブルウイッシュボーン/3リンクリジッドの組み合わせになっており、AE86のストラット/5リンクリジッドと比べても遜色ないどころか一歩進んだ感じさえあった(しかし現実にはかなりのクセモノ)。こんな情報を集めるにつれ、「これにしよう」という気持ちが大きくなっていった。

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 私は中古車専門誌や自動車雑誌の広告を見る間に仕事をするような何日かを過ごした。昭和62年当時でジェミニZZ/Rは、相場は50万円から100万円までくらいだったろう。上限にあるのは、モータースポーツ用にいすゞが内部をバランス取りして組み直した「ブラックヘッド」と呼ばれるエンジンを搭載していたが、100万円は手が届く範囲を超えていた。

結局、新青梅街道沿いにあるBMWのディーラーをする傍ら、中古車販売をしているショップにおいてある昭和58年式のZZ/Rを60万円で手に入れた。

ノーマルでしばらく乗った後、ショックアブソーバーをラリー用のビルシュタインDIYで交換。中古でバケットシートも装着してはじめてドライバーとしてモータースポーツに参加することになる。