10年ほど前にグランプリ出版から「モータリゼーションと自動車雑誌の研究」というやけにカタいタイトルの本を出しました。中身はわりとやわらかくて、歴代自動車雑誌紹介と、それらが発行された時代背景、風俗をからめ、できる範囲で関係者からのインタビューを掲載したという感じの内容です。絶版?になる前に、そこから抜粋したり、今になって思うことを書いてみたいと思います。今回はその8回目です。
1964年にはモーターサイクル出版社(現・八重洲出版)から「ドライバー」が創刊されます。同誌は1951年創刊の「モーターサイクリスト」から派生した自動車雑誌です。取材時には小口泰彦・元ドライバー誌編集長はこう語っていました。
「モーターサイクリストは2輪のレース中心の雑誌でしたが、時代のニーズもあり記事中にオート3輪のインプレッション記事も掲載するようになっていました。さらに4輪車が普及していくにともない、これからは4輪の時代という初代社長、酒井文人の考えで創刊に踏み切ったと聞いています」。
2輪の時代から4輪の時代が訪れたと言って良いでしょう。
ただ、時代背景を見ると全てが順風満帆だったわけでもありません。高度経済成長時代ではあっりましたが、創刊時はオリンピック景気が終わった不況の中でした。その後、いざなぎ景気がはじまりますが、このまま日本の経済成長が続き、本格的なモータリゼーションが来るのか微妙な時代。そんな中での創刊への踏切は勇気のいることだったことが想像できます。
創刊号の表紙はベンツ230SL。巻頭カラーでは日産フェアレディが紹介され、当時のクルマへの強い憧れが伝わってくるようなビジュアル中心のページ構成が見られます。続くグラビアでは「こんにちは裕次郎です」と題して、石原裕次郎と愛車のベンツ300SLが掲載されています。これもクルマが当時の憧れやステータスだったということを示しているところです。
モータースポーツも現在よりもかなり注目度が高い時代でした。神田重巳氏による「焦点!! ホンダGPレーサーを追う」という記事では、ホンダのF1グランプリ参戦をスクープ的に解説。社会的にもインパクトがあったことがわかります。
新車インプレッションでは、ダイハツ・コンパーノが掲載されています執筆者は浮谷東次郎。浮谷が新進気鋭のレーシングドライバーとして頭角を現していた時期です。翌1965年の練習中で帰らぬ人となってしまいますが、同誌がこうした若い才能を持った人物を積極的に登用していたことも注目されるところです。
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